(4)トランスレスUPS
そこで、トランスの代わりに、インダクタンス及びLCフィルターを使用する事にします。

(4a)200Vac用UPS


200Vacの場合、回路は左図のようになります。
コンバータにダイオードを破壊するような電流が流れないよう、インダクタンス(L1~3)を挿入します。
IGBT9~11が動作しない時、コンデンサ(C1)に充電される平均電圧は、入力電圧の1.35倍である270Vになります。無負荷の場合は、ピーク値の282Vです。IGBT9はD1が通電している時、Vdcが300Vdcとなるよう、昇圧チョッパとして動作します。
IGBT10、IGBT11も同様です。Vdcが300VですからDC電流は333Aです。
ダイオードの電流は平均で111A,(333Aの120°通電)です。IGBTを20kHzで動作させるので、汎用のダイオードではなく、IGBTモジュールに内蔵されている高速ダイオードを利用します。
バッテリーは、直流電圧に直結するのではなく、インダクタンスを利用して昇圧して使用します。バッテリーの電圧が低ければ低い程、大電流を扱う事になるので、300Vdcに近いバッテリーを選択する事が肝要です。
以降の計算では、Vbat=150Vを使用していますが、推奨値ではありません。損失計算の為に便宜的に採用しています。
インバータの回路は、線間電圧を200Vacにする必要があるので、正弦波PWMでは無く、二相変調を利用します。
インバータ側のIGBTは20kHzで動作させますので、フィルタの定数としては、
50Hz, 60Hzを通過させ、20kHzをブロックするようなローパスフィルタを設置します。
(4a1)コンバータ側のインダクタンス(L1~L3)
インダクタンスの値を求める為に、過電流抑制用の%インピーダンスを5%とすると、
線間電圧=200V
相電圧=200/√3=115.47V
相電流=100KVA/200/√3=288.7Arms
負荷抵抗=0.4Ω  より
ωL=0.4*5/100=0.02Ω
L=0.02/2/π/50=63.6 (uH) と求まります。

Web.に100A250uHのインダクタンスがありました。重量は5.1kgです。
3個並列にすれば300A80uHを実現できます。
9個で約50kgです。
トランスよりも、かなり軽くなります。

 

 

(4a2)バッテリー電圧昇圧用のインダクタンス(L4)
昇圧回路用のインダクタンスL4の値は次のように求められます。
出力 P1 (KVA)
バッテリー電圧 Vbat (V)
バッテリー電流 Ibat=P1/Vbat*1000
インバータ電圧  Vdc(V)
IGBT7_Duty D7=Vbat/Vdc
IGBT8_Duty D8=1-D7
スイッチング周波数 fc(kHz)
IGBT8 ON時間  TON=1000/fc*D8
IGBT8 OFF時間 TOFF=1000/fc*D7
電流変動率 k1
インダクタンス L4=Vbat*TON/Ibat*(1/k1+1/2)
仮にバッテリー電圧を150Vと考え
P1=100, Vbat=150, Vdc=300, fc=20, k1=0.1とすると、L1=59.1uHが得られます。
先に、100A250uHがありましたので、それを利用しましょう。バッテリーからC1へ充電するのは、連続運転ではないので、そのまま使用します。
停電が頻繁に発生する場合は、2個並列にして200A125uHとして利用します。
(4a3)出力フィルタ(L5~L10、C2~C4)
出力段のフィルターに必要な要件は、
ω(50)*L5<<RL,   ω(20k)*L5>>RL
1/ω(50)/C2>>RL, 1/ω(20k)/C2<<RL です。
RLは、コンバータ側の計算と同じく0.4Ωなので、
3.18E-6<<L5<<0.00127
1.99E-5<<C2<<0.00795 となります。
L5が小さいと軽くできるので、コンバータと同じリアクトルから、中点を取り出して使います。
L5=300A40uH, L6=300A40uH. L7=L5, L8=L6, L9=L5, L10=L6
コンデンサC2は暫定的に200uFとしましょう。
フィルタの入力電圧を200Vとして、出力電圧及びコンデンサC2の電流を計算すると次の様になります。

50Hzでの出力電圧が下がり過ぎですので、直流電圧を少し増加させます。

インバータ回路のキャリア周波数は20kHzです。従って、高調波は20kHz以上です。
20kHzの時、C2には、約25A通電するので、実効値で25A以上通電できるコンデンサを選択します。

 

インターネットに左記のコンデンサが紹介されていました。これを利用します。

 

 

 

(4a4)コンバータ側IGBTのゲート信号と平滑コンデンサ

コンバータ側のIGBTは、自分の相の電圧が他の相よりも高い時のみ、昇圧コンバータとして動作します。入力電圧が正弦波の一部、出力電圧は300Vdc一定となるので、IGBTのオン信号のDutyは、上図のように変化します。

出力電流は333Aです。コンデンサC1の値と電圧リップル、電流リップルの関係を求めると次の様になります。L1=80uHとしました。

平滑コンデンサーとしては、3000uF, そのリップル電流としては、110Aの能力が必要です。

 

(4a5)DC/DCコンバータによる平滑コンデンサ
バッテリーからの充電では、Vbat=150Vと仮定すると、バッテリーからの直流電流が667A,
Vdc=300Vでの平均電流が333Aとなるので、平滑コンデンサに対しては充電電流が333A放電電流が333Aとなりリップル電流は333Aとなります。

リップル電圧は、Dutyが50%なので、次の様になります、

平滑コンデンサとしては、20kHzで動作しているので、500uFで十分ですが、リップル電流としては、330A必要となります。

 

 

(4a6)インバータ回路の動作と平滑コンデンサ
インバータ部のリップル電流は、次の様に計算します。
線間電圧を200Vとしました。
相電流は、出力を100kVAとしていますので、289Aacとなります。電流のピーク値は408Aです。
一方直流電圧は300Vdcですから直流電流は333Adcです。
平滑コンデンサC1に333Aの平均電流が流れ込み、インバータの電流が流出してその差がリップル電流となります。
インバータのゲート信号には、二相変調の信号が与えられています。
IGBTには、下図のような電流が通電します。

U,V,Wの全てにオン信号が与えられている時、合計は0なので、コンデンサC1に充電される電流は直流の333Aです。U,V,Wの二つにオン信号が与えられている時、直流電流333Aからその和を引いたものが充電電流となります、U,V,Wの一つにオン信号が与えられている時、直流電流333Aからその電流をひいたものが充電電流となります。U,V,Wの全てにオン信号が与えれれていない時、合計は0Aなので、333Aが充電電流となります。
この充電電流の二乗に時間を掛け、その総和を時間で除算して、平方根を計算すれば、実行電流となります。
上記の条件では、115Armsとなりました。
コンバータ回路から平滑用に3000uFの要請があり、
バッテリーの昇圧回路から333Aの要請があるので、3000uF-333Aで十分です。
バッテリーの電圧が300Vdcに近く、必要とするリップル電流が少ない場合は、115Aの確保が必要です。
(4a7)コンバータ側IGBTモジュールの損失
コンバータ側のIGBTの損失は、先の計算ソフトより、

Chopperの項目のBoostを選択し、
Nextをクリックして

 

 

 

前述と同様にして、品名CM600DY-13Tを選択し
計算条件として
Vo=300
Io=333
Fc=20
Tc=100
を入力し、
Viに200Vの1.35倍である平均電圧270を入力すれば、入力電流IiとDutyが自動計算されます。
右下のEXECUTEをクリックすれば、

左図のように計算されます。
ここでP-Tr1=550.44がIGBTの損失であり、P-Di2=637.92がダイオードの損失ですが、コンバータ側の動作は連続ではなく、Dutyが1/3なので、ここで表記された損失は、3個の合計の値となります。

 

停電の場合は、バッテリーからの電力供給が始まりますので、同じ計算の条件を入力する画面のViにバッテーリー電圧を入力すれば、計算できます。
Vi=150の場合は、P-Tr1=1396.69,
P-Di2=826.54となりました。

 


インバータ側の計算は、先の計算ソフトに戻って二相変調(2Phase)をクリックし、

 

 

 

IGBTを選択し、
Vcc=300
Io=288,7, Armsの〇に選択マーク
PF=1
M=1.1547
Fc=20
Fo=50
Tc=100 を入力して計算します。
注意することは、電流を実効値に設定する事と、変調率Mを1.1547に設定する事です。
変調率M=1で計算すると、線間電圧が正弦波PWMで計算した時と同じになってしまいます。

計算結果は、P-Tr1=233.57、P-Di1=37.43、P-M=542
なので、正弦波で計算したときよりも、大幅に減少しています。

(理由は、線間電圧を200Vにして出力電流が減少した事と二相変調により実質のスイッチング回数が減った事にあります。)
損失はCON合計=1188.36
バッテリー電圧昇圧=2223.23 @Vbat=150V
INV合計=542*3=1626 で
正常時2814W, 停電時3849W(@Vbat=150V)となります。、
(バッテリーの充電は正常時にIGBT7にオン信号を与えてDown Chopperとして行いますが、 省略しました。)