(4b)400Vac用UPS

400Vacの場合、スイッチング素子は損失の少ないSiCMOSFETモジュールを使用します。回路は左図のようになります。
コンバータにダイオードを破壊するような電流が流れないよう、インダクタンス(L1~3)を挿入します。
SiCMOS9~11が動作しない時、コンデンサ(C1)に充電される電圧は、入力電圧の1.35倍である540Vになります。無負荷の場合は、564Vです。SiCMOS9はD1が通電している時、Vdcが600Vdcとなるよう、昇圧チョッパとして動作します。
SiCMOS10, SiCMOS11も同様です。Vdcが600VですからDC電流は167Aです。
ダイオードの電流は平均で56A,(167Aの120°通電)です。SiCMOSを20kHzで動作させるので、汎用のダイオードではなく、SiCMOSFETモジュールに内蔵されているSBDまたはMOSFETを利用します。(SiCMOSFETのゲートに正の信号を入れれば、順方向のIdsのみならず、逆方向のIsdも通電できます。電流はMOSFETとSBDとBDで分流するのですが、電流が少なくVsdが低いとMOSFETのみとなります。Vsdがやや高いとMOSFETとSBDで分流し、VsdがBDのVTOを超えるとMOSFETとSBDとBDで分流するようになります。CREEのCAS300M12BM2の場合、VTOは約0.7Vです。)
バッテリーは、直流電圧に直結するのではなく、インダクタンスを利用して昇圧して使用します。バッテリーの電圧が低ければ低い程、大電流を扱う事になるので、600Vdcに近いバッテリーを選択する事が肝要です。
以降の計算では、Vbat=300Vを使用していますが、推奨値ではありません。損失計算の為に便宜的に採用しています。
インバータの回路は、線間電圧を400Vacにする必要があるので、正弦波PWMでは無く、二相変調を利用します。
インバータ側のSiCMOSFETは20kHzで動作させますので、フィルタの定数としては、
50Hz, 60Hzを通過させ、20kHzをブロックするようなローパスフィルタを設置します。
(4b1)コンバータ側のインダクタンス(L1~L3)
インダクタンスの値を求める為に、過電流抑制用の%インピーダンスを5%とすると、
線間電圧=400V
相電圧=400/√3=230.94V
相電流=100KVA/400/√3=144.4Arms
負荷抵抗=1.6Ω  より
ωL=1.6*5/100=0.08Ω
L=0.08/2/π/50=254.4 (uH) と求まります。
Web.に100A250uHのインダクタンスがありました(300Vdcの項参照)。重量は5.1kgです。
2直2並列にすれば200A250uHを実現できます。
12個で約60kgです。
トランスよりも、かなり軽くなります。
(4b2)バッテリー電圧昇圧用のインダクタンス(L4)
昇圧用のインダクタンスL4の値は次のように求められます。
出力 P1 (KVA)
バッテリー電圧 Vbat (V)
バッテリー電流 Ibat=P1/Vbat*1000
インバータ電圧  Vdc(V)
IGBT7_Duty D7=Vbat/Vdc
IGBT8_Duty D8=1-D7
スイッチング周波数 fc(kHz)
IGBT8 ON時間  TON=1000/fc*D8
IGBT8 OFF時間 TOFF=1000/fc*D7
電流変動率 k1
インダクタンス L4=Vbat*TON/Ibat*(1/k1+1/2)
仮にバッテリー電圧を300Vと考え
P1=100, Vbat=300, Vdc=600, fc=20, k1=0.1とすると、L1=236.4uHが得られます。
先に、100A250uHがありましたので、それを利用しましょう。バッテリーからC1へ充電するのは、連続運転ではないので、そのまま使用します。
停電が頻繁に発生する場合は、2個並列にして200A125uHとして利用します。
(4b3)出力フィルタ(L5~L10, C2~C4)
出力段のフィルターに必要な要件は、
ω(50)*L5<<RL,
ω(20k)*L5>>RL
1/ω(50)/C2>>RL,
1/ω(20k)/C2<<RLです。
RLは、コンバータ側の計算と同じく1.6Ωなので、
12.72E-6<<L5<<0.00508
0.5E-5<<C2<<0.00199 となります。
L5が小さいと軽くできるので、コンバータと同じリアクトルから、中点を取り出して使います。
L5=200A125uH, L6=200A125uH. L7=L5, L8=L6, L9=L5, L10=L6
コンデンサC2は暫定的に50uFとしましょう。
フィルタの入力電圧を400Vとして、出力電圧及びコンデンサC2の電流を計算すると次の様になります。

50Hzでの出力電圧が下がり過ぎですので、直流電圧を少し増加させます。

インバータ回路のキャリア周波数は20kHzです。従って、高調波は20kHz以上です。
20kHzの時、C2には、約20A通電するので、実効値で20以上通電できるコンデンサを選択します。

インターネットに左記のコンデンサが紹介されていました。
(800V120uFではなく、800V60uF)
これを利用します。

 

 

(4b4)コンバータ側SiCMOSFETのゲート信号と平滑コンデンサ

コンバータ側のSiCMOSFETは、自分の相の電圧が他の相よりも高い時のみ、昇圧コンバータとして動作します。入力電圧が正弦波の一部、出力電圧は600Vdc一定となるので、SiCMOSFETのオン信号のDutyは、上図のように変化します。
ハイサイドのダイオードは、SBDではなく、MOSFETのチャネルをソースからドレインに向けて通電するので、通電する必要のある120°の間は、ローサイドのMOSFETにオン信号が無い時、ハイサイドのゲートにオン信号を供給する必要があります。
出力電流は167Aです。コンデンサC1の値と電圧リップル、電流リップルの関係を求めると次の様になります。L1=250uHとしました。

平滑コンデンサーとしては、2000uF, そのリップル電流としては、55Aの能力が必要です。

 

 

(4b5)DC/DCコンバータによる平滑コンデンサ
バッテリーからの充電では、Vbat=300Vと仮定すると、バッテリーからの直流電流が333A,
Vdc=600Vでの平均電流が167Aとなるので、平滑コンデンサに対しては充電電流が167A放電電流が167Aとなりリップル電流は167Aとなります。
リップル電圧は、Dutyが50%なので、次の様になります、

平滑コンデンサとしては、20kHzで動作しているので、1000uFで十分ですが、リップル電流としては、167A必要となります。

 

 

(4b6)インバータ回路の動作と平滑コンデンサ
インバータ部のリップル電流は、次の様に計算します。
線間電圧を400Vとしました。
相電流は、出力を100kVAとしていますので、145Aacとなります。電流のピーク値は204Aです。
一方直流電圧は600Vdcですから直流電流は167Adcです。
平滑コンデンサC1に167Aの電流が流れ込み、インバータの電流が流出してその差がリップル電流となります。
インバータのゲート信号には、二相変調の信号が与えられています。
SiCMOSFETには、下図のような電流が通電します。

U,V,Wの全てにオン信号が与えられている時、合計は0なので、コンデンサC1に充電される電流は直流の167Aです。U,V,Wの二つにオン信号が与えられている時、直流電流167Aからその和を引いたものが充電電流となります、U,V,Wの一つにオン信号が与えられている時、直流電流167Aからその電流をひいたものが充電電流となります。U,V,Wの全てにオン信号が与えれれていない時、合計は0Aなので、167Aが充電電流となります。
この充電電流の二乗に時間を掛け、その総和を時間で除算して、平方根を計算すれば、実行電流となります。
上記の条件では、57.23Armsとなりました。
コンバータ回路から平滑用に2000uFの要請があり、
バッテリーの昇圧回路から167Aの要請があるので、2000uF-167Aで十分です。
バッテリーの電圧が600Vdcに近く、必要とするリップル電流が少ない場合は、58Aの確保が必要です。
(4b7)コンバータ側SiCMOSFETモジュールの損失
コンバータ側のSiCMOSFETの損失は、
CAS300M12BM2の特性カーブより、Vds(ON), Vsd(ON), Eon, Eoff,Errの電流依存性のカーブを読み取り、Vin=540V, Vout=600V, Iout=167Aとして計算します。
ローサイドのMOSFETの損失は164.6W, ハイサイドのMOSFETの損失は、187.2Wとなりました。
これは、連続で計算しているので、三個分の損失です。
停電の場合は、バッテリーからの電力供給が始まりますので、Vinにバッテーリー電圧を入力して、計算します。
Vin=300Vの場合は、ローサイドのMOSFETの損失が715.3W,
ハイサイドのMOSFETの損失が261.7Wとなりました。
インバータ側の計算は、シミュレーションソフトより、二相変調を選択して計算します。
計算結果は、P-MOS=142.9, P-SBD=0.15, P-M=286.2 となりました。
正弦波で計算したときよりも、少し減少しています。
(理由は、線間電圧を400Vにして出力電流が減少した事にあります。)
損失はCON合計=351.8W
バッテリー電圧昇圧=977W @Vbat=300V
INV合計=286.2*3=858.6W で
正常時1210W, 停電時1835W(@Vbat=300V)となります。、
(バッテリーの充電は正常時にSiCMOS7にオン信号を与えてDown Chopperとして行いますが、 省略しました。)