SiC-セミナー(2020版)概要(第二部)

第二部は、MOSFETの駆動回路による違いと題し、駆動回路の基本的な事を検討します。

一般的には、MOSFETの駆動回路はMOSFETです。

ロジック回路のオープンドレインの回路を利用して、ロジックレベルよりも高い電圧で動作できるようにし、目的とするSiC-MOSFETが必要な電流を供給できるようにPチャネルMOSFETとNチャネルMOSFETで増幅します。入力信号がHレベルで出力電圧がLレベルになってしまう場合は、増幅段を一段追加して反転させます。ロジックレベルの出力段の耐圧は、VDD2以上なければなりません。駆動段のMOSFETは信頼性を考慮しVDD2の2倍以上の耐圧を持った製品を選択します。

SiC-MOSFETの駆動電源が一電源(例えば+15V/-0V)では無く二電源(例えば+15V/-4V)の場合、VSS2は、VSS1ともVSS3とも一致しません。例えばVSS2=-4V, VSS3=0V, VSS1=0Vとなります。この時ロジックの出力であるオープンドレインとなっているMOSFETの耐圧はVDD2以上、アンプに使用しているMOSFETの耐圧はVDD2-VSS2以上(VDD2=15V, VSS2=-4Vの場合は19V以上、余裕をみて38V以上)のMOSFETを選択します。

出力段のPチャネルMOSFETとNチャネルMOSFETがゲートの立ち上がり又は立下りで短絡を起こしてしまう場合は、上図のように、ターンオン用の抵抗とターンオフ用の抵抗を分離し、PチャネルとNチャネルの両方のMOSFETが駆動される瞬間にはドレイン電流がRG(on)とRG(off)を通電し、短絡電流のピーク値を抑制するよう工夫します。

勿論、ロジック回路の代わりに、ドライブ用のカプラ(又はその他のドライバー)を使用すれば、SIC-MOSFETの駆動回路は容易となります。

SiC-MOSFETの駆動条件を調べてみると、上図のようになっていました。メーカによって一定になっている訳ではありません。また今後とも変更が無いとは言えません。(IGBTの場合は+15V/-15Vで各社ともに統一されていました。)

(Id(A)の欄にDと記載した製品はディスクリートデバイスでその特性はオン抵抗で示されます。オン抵抗(mΩ)の欄にMと記載した製品はモジュールでその特性はドレイン電流で示されます。)

RECOMがSiC-MOSFET用の絶縁電源を供給しているので、該当する電源を検索してみました。該当する電圧が無い場合は、特別な製品を開発して頂くか又は少し低い電圧の電源を使用する事になります。

NSOLUTIONでは2017年に15kWのSiC-MOSFET(ディスクリート)を利用したモータ駆動用のインバータを開発しました。

この時駆動に使用したのが、ACPL-P349(BROADCOM製品)で絶縁電源としては、RKZ-052005D(RECOM製品)でした。IGBT用のドライブ回路でも、使用するスイッチング条件に依っては十分駆動できます。

過電圧保護

過電圧保護回路を内蔵するゲートドライブ回路は、TIが販売していました。コレクタ電圧(MOSFETの場合は、ドレイン電圧)をツエナー電圧で検出しツエナー電圧の漏れ電流をゲートに供給しています。ゲートに電流が流入するので、コレクタ(MOSFETではドレイン)の容量に充電している電流の一部がIGBT(MOSFET)を通電しコレクタ電圧(ドレイン電圧)の上昇を抑える事になります。 当然ながらピーク電圧が定格を超えないように十分低い電圧でVce(Vds)を検出し保護する必要があります。

これに対し、コンデンサメーカでは、電圧クランプ用の製品を開発して量産しています。Vdsを検出してゲートに電流を供給するよりも、クランプ用のコンデンサをSiC-MOSFETの近傍に設置する事を勧めています。私もクランプ用のコンデンサを用いるようにしています。

過電流保護

過負荷による過電流、モータロックによる過電流は、電流の上昇速度が遅いので、電流を検出し、制御系にフィードバックして保護を掛けます。

先の15kWインバータでは、電流検出にシャント抵抗を利用し、CPL-C79Aで絶縁増幅し、NCS2003でフィードバック信号を作成しました。

短絡保護

接地事故の場合は、電流が不平衡になるので、インバータの出力に接続されている漏電ブレーカが動作します。漏電ブレーカが動作した時にインバータに影響の無いことを確認しておく必要があります。

SiC-MOSFETにとって重要なのは、休止期間が不足して短絡した場合の素子の保護と、一個のSiC-MOSFETが破損した場合の保護です。いずれも、素子の信号を停止し、安全に(破損する前に)停止する必要があります。

Vds検出方式

Vds検出方式の短絡保護は多くのドライブメーカが採用しています。

Vds検出方式とは、MOSFETがオン状態になった時、Vdsが低くなるという特性を利用したもので、オン信号を供給した後一定時間(過渡時間)経過してもVdsが低くならなければ、短絡が発生していると判断して、オンゲート信号を停止し、ソフトターンオフさせる回路です。

センス電流検出方式(センスエミッタ方式)

センスエミッタ方式とは、MOSFETの電流センス端子を利用する方法で、ドライブ回路のメーカは開発していますが、該当するSiC-MOSFETが見つかりませんでした。もちろん、センス端子のあるSi-MOSFETにも利用できます。

シャント抵抗方式

シャント抵抗方式とは、先の15kWのインバータに採用したのと同様ですが、試作機とは異なり、高速で応答する必要があります。定常時の通電損失を考えると、Vds検出方式の方が好ましいと私は思います。但し、検出する短絡電流の設定はこちらの方が容易です。

温度保護

温度保護はサーミスタの温度を測定するのが、定番になって来ました。

モジュールの場合は、多くのメーカがサーミスタを内蔵するようになってきました。

そこで、保護回路のまとめは次のようになります。

過電圧保護:クランプ用コンデンサ+ゲート抵抗でソフトターンオフ

過電流保護: 電流を検出

短絡電流保護:Vdsを検出し、異常であれば、ソフトターンオフ

      短絡電流を検出し、安全にターンオフ

     (休止期間に余裕を持ち短絡させない。)

温度保護:温度を検出して信号を制御装置に転送

 以上で第二部を終了します。

SiC-セミナー(2020版)概要(第二部)” に対して2件のコメントがあります。

  1. 島武 宗和 より:

    前略
     お世話になります。日本電研の島武です。

    SiC-セミナー(2020版)の資料をpdfで送って戴けませんか?
    SiC初心者です。
    よろしくお願いします。

  2. 島武 宗和 より:

    前略
     お世話になります。日本電研の島武です。
    今朝ほど送って戴きましたが、誤って削除してしまいました。
    スパムメールの間にあり、気づくのが遅れました。
    申し訳ありませんが、再度よろしくお願いします。

    (SiC-セミナー(2020版)の資料をpdfで送って戴けませんか?
    SiC初心者です。
    よろしくお願いします。)

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