SiC-セミナー(2020版)概要(第一部)

令和2年4月に(株)技術情報協会主催のセミナーを実施させて頂く予定でしたが、新型コロナの関係で開催が中止となりました。

そこで、そのセミナーの概要を弊社ホームページにて紹介します。タイトルは「SiC-MOSFETパワーデバイスの駆動手法とインバータ応用、評価」です。

まず第一部は、メーカによるSiC-MOSFETの違いと題し、基本的な事を復讐します。

MOSFETの一般的な構造は、プレーなタイプと言って、ゲートとソースを同一の面に作るタイプです。しかし、この構造は、電力用としての電力密度の向上に限界があります。こで、考えられたのは、上図のようなトレンチ構造です。ゲートがシリコンの内面に入りこんでいますので、ソースとソースの間隔を短くでき、チップの面積を有効に活用する事ができます。MOSFETの記号は、上図の左側のように表記するのが一般的です。

最近開発されたのが、スーパジャンクションという構造です。ゲートは、プレーナー構造ですが、N型シリコンのみであったところに、P型のシリコンを挿入し、耐圧を持たせる為の空乏層の電荷を均等化して空乏層領域の厚さを低減しています。即ち、オン抵抗が低減できるのです。シリコン(Si)のままでも、構造を工夫する事によりオン抵抗を低減できますが、プロセスが複雑となるので、高価な製品となります。SiC-MOSFETの価格が高ければ、これらの新しい技術が採用され、価格が低下してくれば、SiC-MOSFETに移行される事となります。但し低耐圧では、バルクでの損失が少ないので、Si-MOSFETが生き残ると考えられます。SiC-MOSFETに切り替わるのは耐圧600V以上と考えるのが賢明でしょう。MOSFETにとっての重要な特性とは、

  1. 電圧定格:VDSS
  2. 電流定格:IDP, (ID:ケース温度に依存)
  3. チャネル温度:Tch, (Tstg:保存温度)
  4. 通電損失:Rds(ON) or Vds(ON) @Tj opj
  5. スイッチング損失: Eon, Eoff, Err @Tj opj
  6. 許容損失:PD @Tjop
  7. 熱抵抗:Rth(j-c) or Rth(j-f) or Rth(j-a) or Rtj(j-s)

となります。ここで、解り難いのが、2.の電流定格と7.の熱抵抗及び6.の許容損失です。2.の電流定格はケース温度により変わってしまいます。ディスクリートデバイスでは、Tc=25℃とする事が多いのですが、現実的ではありません。モジュールの場合は、供給メーカにより条件温度が異なるのです。7.の熱抵抗は、一般的にRth(j-c)が用いられますが、実際に指定点でのケース温度を測定する事は困難なのです。接触熱抵抗や、放熱フィンの熱抵抗を加算して、Rth(j-f), Rth(j-s)を用いる事になります。6.の許容損失は、一般にTj=Tj(max), Tc=25℃の許容損失を表現するようになっています。実際に使用できるのは、Tj=Tj(opj), Tc=100℃程度となります。ケース温度は、半導体メーカでは無く、装置メーカの使用する放熱インで決まるのです。

もう一つ、MOSFETにとって重要な事は逆方向電流です。IGBTの場合は、逆方向に電流を通電出来なかったので、FRD(ファーストリカバリーダイオード)を使用しました。SiC-MOSFETの場合は、BD(ボディダイオード)にもチャネルにも通電出来る事です。電流が不足する場合は、IGBTのFRDのように、SiCのSBD(ショトキーバリアーダイオード)を利用する事ができます。

上記は、SiC-MOSFETを生産しているメーカ使用している、定格関係の記号の一覧です。メーカによって若干異なっりますが、正しく理解して下さい。私のこの説明文章も全てのメーカに対して共通に使われているものとは限りません。皆さんの、知識と一致しない事もあるかも知れませんが、正しく理解されるようお願いします。定格のみでなく、電気的特性についても同様です。

IGBTの構造

一般に、IGBTはMOSFETのドレインにP層を接続したものと表現されますが、詳しく見ると上図のようになります。オン信号を与えた時は、MOSFETとコレクタ側のPNPトランジスタのPNダイオードが動作し、その後PNPトランジスタがNPNトランジスタを駆動します。NPNトランジスタのVCE(sat)がMOSFETのVDS(on)より低くなると、メイン電流はNPNトランジスタを通電します。MOSFETのゲート信号をオフにして、PNPトランジスタのベース電流を減少させると、NPNトランジスタのベース電流も減少し、ターンオフに至ります。IGBTでは、このターンオフを早くするために、エミッタ側のN層にP層を形成してチャネルの電荷が早く消滅し、NPNトランジスタの電荷のライフタイムを短くするようにしています。 また高速用では、コレクタ側のP層にN層を形成してPNPトランジスタの電荷のライフタイムを短くしています。

モジュールの構造

モジュールとは、金属ベース基板に絶縁基板又はシートを張り付け、その上面に回路配線を施して、その一部にパワーデバイスを搭載し、駆動に必要な配線を施して一定の回路機能を持たせた半導体です。勿論、安全の為に、シリコンゲルで覆ったり、エポキシで充填したりして、安全に使いやすく工夫した、回路機能部品となっています。形状はいろいろありますが、ダイオード、サイリスタ、トライアック、バイポーラトランジスタ、IGBT, IPMと広く採用されています。

金属ベース基板

従来は、絶縁基板として、絶縁物(Al2O3又はAlN)に銅版を接合した、DBC基板というものが、主流で使用されていましたが、最近では、絶縁物では無く、絶縁樹脂を使用した製品も開発されています。

IPM

モジュールには、通常駆動回路が内蔵されていませんが、駆動回路を内蔵した製品は特別にIPM(Intelligent Power Module)として区別しています。当然内部にパワーデバイスの駆動回路が入っていますので、外部に駆動回路は必要ありません。 但し、絶縁電源の必要な製品もあります。

ディスクリートとは、下記のような外観を持った製品となります。

モジュールとは、下記のような外観を持った製品となります。

SiのFRDとSiCのSBDを同一のパッケージに入って製品で比較すると、SiC-SBDの通電損失が少なくなっています。(SiCのFRDではありません。SBDです。)

IGBTとSiC-MOSFETをほぼ類似の外形寸法を持ったモジュールで比較すると、上図のようになります。SiC-MOSFETモジュールとして、CREE, Rohm, 三菱を対象としました。SiC-MOSFETモジュールは、量産の遅れたメーカ程特性が良くなっていました。ダイオードの電圧降下(VF)はSi-FRDが最も低くなりました。但し、スイッチング特性を考慮する必要があります。

MOS構造ではありませんが接合型のSiC-JFETが開発され量産が始まっているようです。

SiC-MOSFET(Discrete)は次のような会社が量産しています。

SiC-MOSFET(Module)は、次のような会社が量産しています。

以上で第一部は終了。

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