過渡熱抵抗の測定方法(測定例を含む)

CCC.過渡熱抵抗の測定方法

C-1.シングルパルスによる測定(加熱法)

    BBB.項参照

C-2.マルチパルスによる測定(加熱法)

過渡熱抵抗を早く測定するように工夫されたのが、マルチパルスです。まずは、供試素子の温度特性を測定します。温度とVFの関係から⊿mV(1℃当たりのVFの温度上昇分)を求めます。過渡熱抵抗の測定回路で電力供給のSW1を複数回一定の周期、一定のDutyでオンさせます。SW1がオフとなり検出電流のみが通電されている時のVFを観測していると、どの程度の温度が上昇したか検討が付きます。この温度上昇は、⊿Tj=⊿VFM/⊿mVとなります。

n番目のパルスまでの温度上昇は⊿Tj(n)=⊿VFM(n)/⊿mV-⊿Tc(n) となります。

通電時間が短くてケース温度の上昇が無い場合は⊿Tc(n)=0℃です。印加電力はP=IP*VF*(ON-Duty) となります。

IP, VFは通電中に変化する場合があります。当然な事ですが平均値を使います。ON-Dutyが少ないと、検出電流のみを通電している間に接合温度が下がってしまうので、なるべく高いON-Dutyを設定します。時刻 Time=(n-1)*(t+⊿t)+t における過渡熱抵抗は、Zth(j-c)((n-1)*(t+⊿t)+t)=⊿Tj(n)/P で示されます。

ここで、tはオン時間、⊿tはオフ時間、ON-Duty=t/(t+⊿t)  となります。

オフ時間は経験からすると1ms程度が適当です。マルチパルスではありますが、通電時間が長いという事は、同程度の温度上昇を得るための印加電力が少ないという事であり、短い時間での温度上昇が少ないので測定誤差が大きくなります。精度良く測定するためには、1msまでは単一パルスで、100msと10秒(必要ならば、100秒も)はマルチパルスとしたらどうでしょう。

C-3.冷却法による測定

まずは加熱法のマルチパルスと同じように加熱して、接合温度が最大定格温度近くで安定するように、VCC1の電圧を調整します。加熱を停止した時刻からの時間をt1としました。

時刻t1における接合温度の減少分は⊿Tj(t1)=⊿VFM(t1)/⊿mV-⊿Tc(t1)となります。

印加電力は、P=IP*VF*(ON-Duty) となります。

ここでIP, VFは飽和時の値です。

時刻t1における過渡熱抵抗はZth(j-c)(t1)=⊿Tj(t1)/Pで示され、ON-Dutyは加熱時のON-Duty=t/(t+⊿t)となります。

ここで注意しなければならないのは、加熱時間です。温度が飽和していると思っていても、加熱時間が短いとIPが大きくなり、加熱時間が長いとIPが小さくなる傾向にあります。目視で温度が飽和していると判断するのが難しいのです。即ち、加熱時間が短いと通電電流が大きく加熱電力が大きくなるので、過渡熱抵抗が小さく計算され、加熱時間が長いと逆に過渡熱抵抗が大きく計算されるのです。それを除けば加熱法よりも容易に測定できます。

C-注1)短い時間の取り扱い

通電時間(t)直後の検出電流によるVFの値は測定回路にあるスイッチングデバイスの影響を受けるので、100us未満は誤差と考える。100us未満の値を推定したい場合は、100us以上の波形から直線で近似し、0usでのVF(接合温度)を求める。

C-注2)マルチパルスのデータ読み取り

マルチパルスで測定する場合、通電パルスと同期を取ってVFを読み込む。例えば、通電パルスが10秒の場合、Duty=90%とすると、検出電流のみを通電している時間が1秒となり、データを100ms間隔でを呼び込むと、100msの過渡熱抵抗分が測定誤差となる。C-注1)の100us誤差を考慮すると、100us間隔以上の速さ(10kp/S以上の読み込み速度)でデータを読み込むのが望ましい。

C-注3)長時間(加熱法)でのデータ読み取り

半導体の接合・ケース間の熱抵抗ではなく、接合・周囲間、接合・冷却水間の過渡熱抵抗を測定する場合、当然マルチパルスを使用する事になる。例えば、通電パルスが500秒の場合、Duty=90%とすると、検出電流のみを通電している時間が50秒となり、もはや半導体の熱抵抗は誤差範囲になってしまう。(Dutyを上げる事も考えられるが、目視での読み込みが難しくなり、適当な接合温度となるように、通電電流を設定する事が難しくなる。)そこで通電パルス5秒、50秒、500秒と三回に分けて測定し、50秒で測定した過渡熱抵抗は、5秒の過渡熱抵抗と一致するように、500秒で測定した過渡熱抵抗は、50秒の過渡熱抵抗と一致するように補正する事が考えられる。

C-注4)長時間(冷却法)でのデータ読み取り(その1)

加熱中は、スイッチング周期1kHz, オンDuty=90%程度で行う。フルスケール10msで観測すれば、検出電流のみの通電が1msあり、十分観測できるし前述の100us問題も回避できる。接合温度が安定したところで、通電用のスイッチをオフにし、VFとケース温度を読み込む。1us間隔で読み込めば、100us問題の対応も補正出来る。問題は、メモリー容量が必要な事(500秒に対し1us間隔とすると500Mデータの容量が必要)と計算時間。

C-注5)長時間(冷却法)でのデータ読み込み(その2)

冷却法でフルスケール5秒、50秒、500秒と三回測定する。5秒の時20kp/s, 50秒の時2kp/s, 500秒の時200p/sとすれば、メモリーは100kデータですみExcelでも対応できるようになる。オシロと通電停止信号の同期が取れていない場合は、加熱法と同様に50秒、500秒の測定を補正する。 

DDD.測定例

D-1.IPMでの(ダイオード)の測定例

上図は、IPMに内蔵されているFRD又はMOSFETのBDの熱抵抗を測定する時の回路です。身近に2in1のIGBTがありましたので、上図のようにい一部をメイン電流のスイッチとして利用しました。

上図のa)からc)は加熱法でのVFの波形です。a)は通電時間全体をしめした波形、b)はディユーティが分かるように拡大した波形、c)は通電時のVFを読み取れるように拡大した波形です。見て分かるようにノイズがありますので、ノイズを取り除いて、VFの波形を読み取る必要があります。通電前の検出電流によるVFは約0.62V通電中の検出電流によりVFは約0.6Vで20mV程下がっていいるので10℃程上昇している事になります。この波形を見ながらVcc1を調整してVFを適当な値(約50℃程度)とし、記録して過渡熱抵抗を計算します。ノイズの部分を読み取らないように注意を払う必要があります。

上記のd), e)は冷却法でのVFの波形です。時刻0.128秒程度までが加熱時間です。VFの値(図では0.5V程度)の波形を見ていて、温度が増加も減少もしないようにVcc1を調整します。その時の通電中の電圧と電流及び通電中のディユーティで印加パワーを求めます。冷却法でもノイズはありますが、加熱法に比べればVFの読み取りが容易です。

上記は二種類のIPMのダイオードの過渡熱抵抗を示しています。プリント基板に取り付けられていますので、接合・ケース間ではなく、接合・周囲間の熱抵抗です。

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