パワーエレクトロニクスの基本(4) 半導体

 

パワーエレクトロニクスの基本としてパワー用の半導体を紹介します。

パワー用の半導体として、基本である、シリコンン整流素子から、最近開発されている、SiC-MOSFET, GaN -FET(HEMT)まで、基本的な事を紹介します。
付録として、IGBT, MOSFET, GaN -FETのドライブ回路も追加しました。
目次は
1. 半導体とは
1a.周期律表
1b. Si, SiC, GaNの違い
2. パワーデバイスの構造と特長
2a. ダイオード(FRD含む)
2b. トランジスタ
2c. サイリスタ
2d. GTO
2e. SBD
2f. MOSFET
2g. IGBT
3. パッケージ
3a.ディスクリート
3b. モジュール
4. デバイス比較
4a. Si vs SiC

4a(a) FRD vs SBD

4a(b) 600V系 MOSFET vs IGBT

4a(c)1200V系 MOSFET vs IGBT

4a(d)1200V系 MOSFETモジュール vs IGBTモジュール
4b. Si vs GaN
5. 付録
5a IGBTのドライブ回路

5b MOSFETのドライブ回路

5c GaN-FETのドライブ回路
となっています。

***** 1.半導体とは  *****
1a. 周期律表

https://ja.wikipedia.org/wiki/より

上図は、高校生時代に学んだ周期律表です。
原子の外側には、2個の電子が回転しており、その外側ともう一つ外側には8個の電子, その外側には16個の電子が回転しています。
He(ヘリウム)は2個の電子しかありません。
Ne(ネオン)は2個の電子と8個の電子です。
Ar(アルゴン)は2個の電子と8個の電子とその外側の8個の電子があります。
電子の回転できる位置に電子がつまっているので、He, Ne, Arは安定した気体という事になります。
一方14族(昔は4族と言っていた)の原子C(炭素), Si(シリコン), Ge(ゲルマ)は、一番外側の電子の回転している領域の丁度半分に電子で埋まっており、半分は開いています。
従って一番外側の電子が隣りの原子の電子と共有され、安定した構造となるのです。炭素(C)の安定した構造とはダイヤモンドの事です。平面ではありませんので三角錐の構造となります。
14族の原子に13族の原子を不純物として入れると、電子が一個欠乏し、ホールが出来ます。
14族の原子に15族の原子を不純物として入れると、電子が一個過剰になり、稼働電子が出来ます。
不純物が少なければ絶縁体であり、不純物が多ければ電気が通電できて導体となります。
そこで14族の電子は半導体と呼ばれます。
ホールの出来た半導体をP型半導体と呼び電子の過剰な半導体をN型半導体と呼びます。
P型半導体とN型半導体を接合すると、PN接合の半導体が出来ます。
14族の原子としては、Siが一般的であり、P層を形成するための原子としては、B(ボロン), N層を形成する為の原子としては、P(リン)が一般的に用いられてきました。
取扱いが容易であれば、他の13族、15族の原子でも構わないのです。
Si(シリコン)とC(炭素)は同じ14族の組み合わせであり、
Ga(ガリウム)とN(窒素)は13族と15族の組み合わせです。
(窒素Nは鉱物ですが、窒素N2は空気中に含まれる気体となります。)

1b. Si, SiC, GaNの違い

www.oeg.co.jp/Exhibition/pdf/16semina1.pdf 筑波大学より

上図は、Si, SiC, GaNの物理定数を比較したものです。
SiCとGaNはバンドギャップが広いので、高い電圧の半導体を作るのに適しています。電子、正孔の移動度が少し遅くなりますが、半導体の厚さが薄くなれば、その分移動時間も短くなります。
チャネルでの移動度は、SiCの場合は遅くなり、GaNの場合は早くなります。
同じ厚さだとシリコン(Si)に比べ、SiCはオン抵抗が増加し、GaNはオン抵抗が減少します。
MOSFETのオン抵抗を下げるには、パターンの微細化を実施し、チャネル長を短く、チャネル有効幅を大きくする事が一般的ですが、チャネル抵抗とバルク抵抗(耐圧を売る為のN-層の抵抗)を比較し、バルク抵抗が大きい場合はチャネル抵抗を無視し、バルク抵抗を下げるようにします。(SiCの場合はバルクの厚さを薄くします。)
当然SiC化によりバルク抵抗が下がると、チャネル抵抗の見直しも必要となります。
SiC, GaNの電界強度はSi(シリコン)に比べ約10倍となるので、理論的にはバルクの厚さを1/10としてバルク抵抗を下げる事ができます。
SiCは熱伝導率に優れるので、同じ量の発熱があった場合、同じ大きさであれは、温度上昇が1/3, チップの面積が1/3であれば温度上昇が同じとなります。

www.oeg.co.jp/Exhibition/pdf/16semina1.pdf 筑波大学より

シリコン(Si)のSBDとSiCのSBDを比較すると、SiCのSBDのN-層の厚さが1/10となり、N-層の濃度を見直すとオン抵抗は1/300まで低減できます。
実際シリコンのSBDは60~120Vが限界でしたが、SiCになって、1200V, 1700VのSBDが開発されています。

www.oeg.co.jp/Exhibition/pdf/16semina1.pdf 筑波大学より

SiCのMOSFETはシリコンと同様に縦型構造ですので、シリコンが全てSiCに変わります。GaNのFET(HEMT)は横型構造ですので、安価なSiの上に絶縁層を設け、その上にGaNを気相成長させて利用します。

***** 2. パワーデバイスの構造と特長*****
2a. ダイオード(大分類:FRD含む)
1)(小分類の)ダイオード
 ダイオードの記号は左図のように表します。

P型半導体に正の電圧、N型半導体に負の電圧を印加すると、電子はN型半導体からP型半導体に流れ込み、正孔はP型半導体からN型半導体に流れ、電流が通電する事になります。

逆に、P型半導体に負の電圧、N型半導体に正の電圧を印加すると、PN接合にあった電子はカソード電極に引き寄せられ、正孔はアノード電極に引き寄せられ、PN接合の不純物が無くなって絶縁体となります。この状態で電流は通電されません。
ダイオードの重要な特性を三つ揚げると次のようになります。
① Vf 順電圧降下
順方向に電流を通電した場合のアノード(A)・ カソード(K)間電圧降下
② If: 順電流
順方向(アノードからカソード)に通電する電流
③ VRRM:ピーク繰り返し逆電圧
正弦半波の波形で繰り返し印加できる逆方向の電圧。正弦波にパルス状の波形が重調される場合は、その電圧を含む最大値

2)(整流用)ダイオード
ダイオードが整流用(交流を直流に変換して利用する回路)の場合は、次のような特性も重要となります。
①’ VFM: ピーク順電圧
順方向に定格の平均順電流の正弦半波を通電した場合のピーク電流に対する、アノード(A)・ カソード(K)間電圧降下
②’ IF(AV): 平均順電流
指定温度で通電出来る順電流(正弦半波)の平均値

③’ VRRM:ピーク繰り返し逆電圧
正弦半波の波形で繰り返し印加できる逆方向の電圧。正弦波にパルス状の波形が重調される場合は、その電圧を含む最大値
④ IFSM: ピーク1サイクルサージ電流
50Hz又は60Hzベースの正弦半波1サイクルで通電可能な電流ピーク値
(規定値以上の電流が通電する可能性のある場合は、整流ダイオード(素子)に直列に抵抗を挿入して電流を抑制します。)
⑤ Tj: 接合温度 PN接合の保証温度
⑥ Tstg: 保存温度 デバイスの保存温度
(参考)
Vfの近似式としては、次の2種類のものが良く利用されます。
AAA) Vf=Vt0+r*If (通電電流が定格と比べ同等か大きい場合)
ここで、rは定格電流におけるVfと定格電流の3倍の電流におけるVfから算出される値。(特性カーブの算出にはこの数式が使用されます。)
Vt0は、線形グラフにおいて、定格電流でのVfと定格電流の3倍の電流でのVfとを結ぶ直線が、If=0の時に、Vf軸と交わる交点のVf軸の値。
BBB) Vf=a1+a2*Log(If)+a3*If (通電電流が直線近似からずれている場合)
ダイオードの線形の特性カーブでは、読み取れないが、片対数の特性カーブで読み取りが可能なIfでのVfを算出する計算式。
定数のa1, a2, a3は片対数上の測定データから逆算して求めます。

上記BBB)の特性カーブは、電流軸が対数なので、左図のように示されます。(一例です。)

 

 

 

 

 

現在販売されている整流素子(ダイオード)の例を次に示します。

(調査した時点でのラインアップです。使用時には、供給可否を必ず確認して下さい。)更に高耐圧の整流素子としては、
RM1200DG-90F (Mitsubishi 4500V1200A)
D6001N50T   (Infineon 5000V6070A) という製品もあります。

3)高速用ダイオード

通電状態からオフ状態に移行するのに、電子がカソード電極に移動し、ホールがアノードに移動して、PN接合近傍に空乏層(電子とホールがなく絶縁状態になる領域)を作ります。その移動には、短時間ではありますが、時間を必要とし、見かけ上N型電極からP形電極に通電するような、逆回復電流が見られます。

この逆回復電流は全ての整流用ダイオード(素子)に見られるものですが、高速用は、金属を拡散したり、電子線で格子欠陥を作って、逆回復時間を、例えばtrr1からtrr2に、と言うように短くしています。金属拡散の場合は、電子のトラップが増加し、電子の移動度が下がるので、Vfが増加すると言う現象も見られます。

この高速用の整流素子(ダイオード)は、各種のスイッチング電源に利用され、電圧型インバータの場合は、300Vdc用に600V耐圧の高速用整流素子が600Vdc用には1200V耐圧の高速整流素子が主に利用されます。なをIGBTモジュールの場合は、多くの場合、モジュールに内蔵されています。

4)定電圧ダイオード

空乏層が伸びると、いずれは限界に達し(電界強度が上がり)なだれ効果を起こして電流が流れます。
しかし、この時の電流が少なく、電流分布が均一であれば、接合温度は規定値以内に留まり、破壊することはありません。またその電圧は一定となります。
この特性を利用した素子が定電圧ダイオードです。

特性を波形で示すと、左図のようになります。

制御回路の定電圧電源(負荷電流が大きい場合は、電源用ICとなる)、制御基盤の過電圧入力保護、車載のオルタネータダイオードとして利用されています。

5)フォトダイオード
記号          回路動作説明図

空乏層が伸びた状態で光を当てると、P型も、空乏層もN型も活性化し電子が動きやすくなります。
P層と空乏層で発生したホールは電源のマイナス端子へ、N層と空乏層で発生した電子は電源のプラス端子へ向かいます。従って電流はアノード端子から外部回路を経由してカソード端子へ向かいます。(ダイオードの記号と電流の流れる方向は反対になります。)
このダイオードはフォトカプラの受光部に利用されています。

6)可変容量ダイオード

空乏層が伸びた状態で交流信号を重調すると、交流電流が流れ、その電流の大きさは、直流電圧によって変化します。
この特性を利用したものを、可変容量ダイオード(通称バリキャップ)といいラジオの検波等に利用さます。

 

等価回路は、通常のダイオードに容量が追加されたような記号となります。

7)SBD(ショトキーバリアダイオード)
SBDはダイオードの仲間ですが、バイポーラではなく、ユニポーラなので、改めて2eの項で解説します。

2b. トランジスタ
トランジスタは次のように分類されます。

ここでは、バイポーラトランジスタについて解説します。
2) 電界効果トランジスタについては、2f項、3) 絶縁ゲートバイポーラトランジスタについては、2g項を参照して下さい。

 

 

 

(バイポーラ)トランジスタの記号は、一般に左図のように表示されます。矢印の表示されている端子がエミッタとなります。円記号は、一素子である事を示すのですが、誤解のない場合は省略する場合もあります。

トランジスタの構造は、左図のようにNPN構造又はPNP構造となっています。

 

ベース・コレクタ間に逆バイアスを印加すると、PN接合の電子、ホールはそれぞれ、プラス、マイナス電極に引き寄せられ空乏層が発生します。
この状態でベースからエミッタに電流を通電すると、電子がエミッタからベースに通電しますが、一部の電子は空乏層で加速されてコレクタに到達します。このコレクタに到達する電子とベースに到達する電子の比が電流増幅率になります。
pベースを薄くする程、コレクタ電圧を高くする程、電流増幅率が大きくなります。

電流の大きなバイポーラトランジスタは放熱が容易なように、コレクタを放熱面とし、ベースとエミッタを他の面に構成します。
一般にエミッタ及びベースとなるN型半導体及びP型半導体の厚さは数ミクロンで、コレクタとなるN型ベース基板の厚さは数十から数百ミクロンとなります。
このN型ベース基板の厚さは、トランジスタの耐圧により決定されます。

 

 

トランジスタと言ってもベース電流が大きくなると回路設計が面倒になります。
そこで、スイッチング速度が遅くても構わない場合は、左図のようなダーリントン構造を使用します。
仮にhFE=10とすると、IC=100Aの時、シングルでは、IB=10Aとなり, ダーリントンではIB=1Aで済むのです。、
ダーリントン構造のトランジスタを採用する事により、ベース駆動回路の設計が容易となります。

古い話ですが、上図の左は400A300Vのダーリントントランジスタのエミッタパターンで上図の右は300A600Vのダーリントントランジスタです。
この電圧電流定格のパワーデバイスとしては、現在IGBTが採用されているので、これらのバイポーラトランジスタは既に生産されていません。
2c. サイリスタ
サイリスタの仲間には次のような製品があります。

 

 

 

 

 

1)サイリスタ

サイリスタは、ダイオードにゲートの記号を追加して左図のように記載します。
逆導通サイリスタは、カソードマークにツエナーダイオードの記号のような記号を追加し、逆方向にダイオードとして電流が通電する事を示します。

サイリスタの構造は左図のように、PNPNの四層構造となっています。

 

逆導通サイリスタは、左図のようにカソード電極にP層、アノード電極にN層が接続されています。
アノードがプラスの時はサイリスタとして動作し、カソードがプラスの時はダイオードとして動作するのです。

サイリスタの等価回路は、アノード側のPNPトランジスタとカソード側のNPNトランジスタで現されます。
ゲートからNPNトランジスタのベースに電流を通電すると、NPNトランジスタが動作し、コレクタ電流が通電します。
このコレクタ電流はPNPトランジスタのベース電流になっているので、PNPトランジスタが動作しコレクタ電流が通電します。
このコレクタ電流はNPNトランジスタのベース電流になっているので、NPNトランジスタが動作し、カソードに電流を通電します。
NPNトランジスタを1, PNPトランジスタを2とすると

IC1=HFE1*IG @動作開始時
IB2=IC1,
IC2=HFE2*IB2,
IB1=IC2+IG,
IC1=HFE1*IB1, が成り立ちます。
必要なゲート電流は、
IG=(1-hFE1*hFE2)*IB1 となります。
即ち、NPNトランジスタの増幅率とPNPトランジスタの増幅率の積が1を超えたら、ゲート電流を供給しなくとも,電流は流れ続ける事になります。
通電を維持する為に、ゲート電流が不要という事になるので、微小な信号で大電流を扱う事ができます。
通電を停止するには、外部回路で電流をゼロにするか又は交流電流を扱います。

 サイリスタの重要な特性
① VTM: ピークオン電圧:順方向に定格の平均オン電流の約3倍(指定あり)の電流を通電した場合のアノード(A)・ カソード(K)間電圧降下
② IT(AV): 平均オン電流:指定温度で通電出来るオン電流の平均値
③ VDRM/VRRM:ピーク繰り返し順電圧/逆電圧:正弦半波の波形で繰り返し印加できる順方向又は 逆方向の電圧。正弦波にパルス状の波形が重調される場合は、その電圧を含む最大値
④ ITSM: ピーク1サイクルサージオン電流:50Hz又は60Hzベースの正弦半波1サイクルで通電可能な電流ピーク値
⑤ IGM:ゲートに通電出来る電流の最大値、ゲート電流は制限抵抗によりこの値以下に抑制する必要があります。
⑥ VFGM:ゲートに印加出来る電圧の最大値、ゲート回路の駆動電圧は、この値以下に制限する必要があります。 (ゲート条件は、電気的特性のIGT, VGTの測定条件に合わせるのが好ましい)
⑦ IH:保持電流:サイリスタがオンし続けるアノードの電流 (ゲート信号は、アノード電流がIH以上になるまで供給する必要があります。(電流の立ち上がりが遅い誘導負荷の場合に注意が必要)
⑧ dV/dt: 臨界オフ電圧上昇率:この値よりも急速な電圧上昇をした場合、内部電荷の移動がベース電流となって、ターンオンするか又は一部がターンオンして破損する可能性があります。スナバ回路でdv/dtを低減します。
⑨ di/dt: 臨界オン電流上昇率、この値よりも急速な電流上昇率で上昇した場合、内部の通電領域が全面に広がっておらず、電力密度の増加により素子破壊に至る可能性があります。アノードリアクトルを入れて、電流上昇率を抑制する必要があります。
⑩ Tj: 接合温度 内部PN接合の保証温度(当然Tjが低ければ寿命が長くなり、Tjが高いと寿命が短くなります。誤動作の原因ともなるので、接合温度が定格を超えないように放熱を施します。)
⑪ Tstg: 保存温度 デバイスの保存温度
⑫ Tq: ターンオフ時間(高速サイリスタの場合)
指定の条件でのターンオフ時間です。 実機の転流回路又は転流用コンデンサ設計の目安となります。
(高速サイリスタの用途は殆どがIGBTに変わりましたが保守で必要な場合は注意が必要です。)

下記はサイリスタの一例です。

他にも
TZ530N36KOF (Infineon 3600V/530A Module)
258RT250        (京セラ 2500V25A Stud)
FT1500AU-240  (三菱 12kV1500A 平型) といった製品があります。

2)トライアック
トライアックは、T2からT1の方向にもT1からT2の方向にもサイリスタのような動作を行うので、記号はダイオードを逆方向に接続し、ゲートを取り付けたような形状となっています。

即ちその構造は、T2からT1を見てもPNPNの四層構造であり、T1からT2を見てもPNPNの四層構造となっています。

 


(Ⅰ+モード:モードⅠ)
T2に正の電圧を与え、ゲートに正の電圧を印加すると、ゲート電流は、T1側のNPNトランジスタと通電し、そのトランジスタのコレクタ電流は、T2側のPNPトランジスタを通電するので、従来のサイリスタと全く同じ動作となり正常に動作します。

(Ⅰ-モード:モードⅡ)
ゲートに負の電流を通電すると、T1の右側の電極をP型エミッタ、ゲート電極直下をN型ベース、P型コレクタとする電流が一旦通電し、この電流によるP型の電位がT1の左側の電位よりもPN接合の分だけ上昇すると、T1左側のNPNトランジスタが動作する事となり、ひいてはPNPトランジスタも動作する事になるので、サイリスタとして動作します。

(Ⅲ+モード:モードⅣ)
T2に負の電圧を印加し、ゲートに正の電圧を印加した場合、まずは、ゲート電流がゲート端子から右側のT1端子に通電します。(赤矢印で表示)
次にゲート直下のNPNトランジスタが通電し、T2側のNPNトランジスタも通電します。(青矢印で表示)
すると、ゲート電極直下のP層を基として小さなPNPNサイリスタが動作し、続いてT1電極をP層としたメインのサイリスタが動作するようになります。
(Ⅲ-モード:モードⅢ)
T2に負の電圧を印加し、ゲートの負の電圧を印加した場合、まずは右側の電極T1からゲートに向けて電流が流れます。
通電電流が大きくなると一部の電流はN層を通電するようになります。
この時、ゲート直下のN層の電流の方向は主電流とは逆方向です。
T1側のNPNトランジスタが動作するので、T2側のNPNトランジスタも動作を開始します。
このように、トライアックはT2の電位がT1の電位より高くても低くても、
ゲートの電圧がT1に対して正であっても負であっても動作します。
但し感度は異なります。

 トライアックの重要な特性
① VTM: ピークオン電圧:順方向に定格の平均オン電流の約3倍(指定あり)の電流を通電した場合のアノード(A)・ カソード(K)間電圧降下
② IT(RMS): 実行オン電流:指定温度で通電出来るオン電流の実効値
③ VDRM:ピーク繰り返し順電圧:正弦半波の波形で繰り返し印加できる電圧。正弦波にパルス状の波形が重調される場合は、その電圧を含む最大値
(トライアックに取ってはT2が正であっても、負であっても順方向です。)
④ ITSM: ピーク1サイクルサージオン電流:50Hz又は60Hzベースの正弦半波1サイクルで通電可能な電流ピーク値
⑤ IGM:ゲートに通電出来る電流の最大値、ゲート電流は制限抵抗によりこの値以下に抑制する。
⑥ VGM:ゲートに印加出来る電圧の最大値、ゲート回路の駆動電圧は、この値以下に制限する。(ゲート条件を電気的特性のIGT, VGTの測定条件に合わせるのが好ましい)
⑦ Tj: 接合温度 内部PN接合の保証温度(接合温度が定格を超えないように放熱を施します。)
⑧ Tstg: 保存温度 デバイスの保存温度
⑨ (dv/dt)c 転流時臨界電圧上昇率: トライアックの場合は、電流が通電した直後の逆方向の電圧の上昇率が誤点弧の観点から重要です。
⑩ ゲート感度:IGBT, VGTはⅠからⅣのモードで規定されています。Ⅳモードの動作が保証されていない製品がありますので、通常は負のゲート信号を供給します。
モードⅠ T2がプラス電圧でゲートもプラス電圧
モードⅡ T2がプラス電圧でゲートはマイナス電圧
モードⅢ T2がマイナス電圧でゲートもマイナス電圧
モードⅣ T2がマイナス電圧でゲートはプラス電圧

下記はトライアックの一例です。

国内ではルネサスのみが供給していました。

3) 光トリガサイリスタ

光トリガサイリスタの記号は、ゲート信号として、光エネルギーが使用されるので、電気配線を締め付ける平座金の○では無く、光を示す→を利用します。

 

 

 

動作は、電気入力のサイリスタとおなじですが、光エネルギーは電気エネルギーに比べて小さいので、何段も増幅します。

 

 光トリガサイリスタの重要な特性
① VT: オン電圧:順方向に指定のオン電流を通電した場合のアノード(A)・ カソード(K)間に発生する電圧降下
② ITAVM: 平均オン電流:指定温度で通電出来るオン電流の平均値
③ VBO/VRRM:ブレークオーバ電圧/ピーク繰り返し逆電圧:正弦半波の波形で保護の目的でブレークオーバする順方向電圧、及び繰り返し印加できる 逆方向の電圧。(過電圧で破損しない事が条件になっています。)
④ ITSM: ピーク1サイクルサージオン電流:50Hz又は60Hzベースの正弦半波1サイクルで通電可能な電流ピーク値
⑤ PLM:最少(光)ゲート・トリガーパワーは、ターンオンに必要なゲートに供給する光の最小値。専用の発光ダイオードを使用し、光ファイバーを経由してエネルギーを供給する必要があります。
⑥ IH:保持電流:サイリスタがオンし続けるアノードの電流。ゲート信号は、アノード電流がIH以上になるまで供給する必要があります。(誘導負荷の場合に注意)
⑦ dV/dt: 臨界オフ電圧上昇率:この値よりも急速な電圧上昇をした場合、内部電荷の移動がベース電流となって、ターンオンするか又は一部がターンオンして破損する可能性があります。
⑧ di/dt: 臨界オン電流上昇率、:この値よりも急速な電流上昇率で上昇した場合、内部の通電領域が全面に広がっておらず、電力密度により素子破壊に至る可能性があります。アノードリアクトルを入れて、電流上昇率を抑制して下さい。
⑨ Tq: ターンオフ時間: 指定の条件でのターンオフ時間です。 実機の転流回路又は転流用コンデンサ設計の目安となります。
⑩ Tj: 接合温度 内部PN接合の保証温度
Tstg: 保存温度 デバイスの保存温度
光トリガサイリスタの例

現在一般に市販しているのは、ドイツのInfineonのみです。
過去に於いては、東芝、三菱、ABB(ASEA),Siemensが量産販売していました。
左記は、東芝が発売していたLTTのペレットパターンと外形図です。

 

 

 

 

発光ダイオードは二個を同時に駆動し、一個のダイオードが破損しても残りの一個で次期の点検まで十分駆動し続けるよう設計します。

 

 

 

 

2d. GTO ( ゲートターンオフサイリスタ)
GTO(ゲートターンオフサイリスタ)とは、ゲート信号で電流をターンオフ出来るサイリスタです。

構造的にはサイリスタと同じです。
異なる点は、サイリスタがゲート駆動電力を小さくする為に、増幅ゲートを何段か使用しているのに対し、GTOは増幅ゲートを利用していない事です。
ターンオンの時、サイリスタと同様にゲートにオン信号を供給します。但し増幅ゲートを使用していませんので、ゲート電流は少し大きくなり、信号の幅も少し大きくなります。
サイリスタはアノード電流がゼロになるまでターンオフできませんが、
GTOはゲートからPNPトランジスタのコレクタ電流を引き出して、NPNトランジスタのベース電流をゼロにしてターンオフを行います。
大電流を引き出すので、ゲートは必然的にサイリスタより大きくなっています。
しかし、転流の為の大がかりな外部回路が不要になるというメリットがあるのです。
 GTOの重要な特性
① VTM: オン電圧:順方向に指定のオン電流を通電した場合のアノード(A)・ カソード(K)間電圧降下
② IT(AV): 平均オン電流: 指定温度で通電出来るオン電流の平均値
③ VDRM/VRRM:ピーク繰り返し順電圧/逆電圧
正弦半波の波形で繰り返し印加できる順方向又は 逆方向の電圧。正弦波にパルス状の波形が重調される場合は、その電圧を含む最大値。但しスイッチング特性を改善するために、アノードショート構造を採用している製品はVRRMがゲート・カソード間電圧程しかありません。
④ ITSM: ピーク1サイクルサージオン電流:50Hz又は60Hzベースの正弦半波1サイクルで通電可能な電流ピーク値
⑤ IFGM/IRGM:ゲートに通電出来る電流の最大値。
⑥ VFGM/VRGM:ゲートに印加出来る電圧の最大値。
(負のゲート電流の能力はピークゲートターンオフ電流以上必要です。)
⑦ dv/dt:臨界 オフ電圧上昇率: この値よりも急速な電圧上昇を起こした場合, オンして破損する可能性があります。必ずスナバー回路で抑制します。
⑧ di/dt: 臨界オン電流上昇率、:この値よりも急速な電流上昇率で上昇した場合、内部の通電領域が全面に広がっておらず、電力密度により素子破壊に至る可能性があります。アノードリアクトルを入れて、電流上昇率を抑制して下さい。
⑨ tgt:ターンオン時間 設計したゲート駆動回路でターンオン動作を行わせ、規格に入る事を確認します。長い場合は、ゲートの通電能力を補強します。
⑩ Tgq: ターンオフ時間:設計したゲート駆動回路でターンオフ動作を行わせ、規格に入る事を確認します。長い場合は、負のゲートの通電能力を補強します。
⑪ Tj: 接合温度 内部PN接合の保証温度
⑫ Tstg: 保存温度 デバイスの保存温度

GTOの例

先頭車両が牽引する機関車方式の電鉄(初期の日本の新幹線、ドイツ、フランスの新幹線、スイスの車両)に多用されています。
多数のモータカーを使用する電車方式のモータ制御(現在の日本の新幹線及び主な鉄道車両)は、電流容量の少ないIGBTモジュールを多数使用するようになりました。

2e. SBD(ショトキーバリアダイオード)

ショトキーバリアダイオードは、金属とP型半導体又はN型半導体を接続したダイオードです。

発明者の名前をもじってダイオードのカソードマークをSと表記します。

(定電圧ダイオード=ツエナーダイオードも同様です。カソードマークをZと表記します。)
PN接合を持たないので、電荷を蓄積する事が無く、多数キャリアを高速で動作させる事ができます。

N型半導体を利用して、金属側にプラスの電圧、半導体側にマイナスの電圧を印加すると、N型半導体の電子は金属電極に飛び込み、プラスの電源に流入します。電流の流れは、電子のながれと逆になります。電源に能力がある限り通電します。
印加電圧を反転すると、金属との界面の電子は移動しますが、空乏層が発生し、電流が流れなくなります。

 

 SBDの重要な特性
① VFM ピーク順電圧 :指定した電流でのアノード(A)・ カソード(K)間電圧降下
② IF(AV): 平均順電流: 順方向(アノードからカソード)に通電する電流
③ VRRM:繰り返しピーク逆電圧: 正弦半波の波形で繰り返し印加できる逆方向の電圧。正弦波にパルス状の波形が重調される場合は、その電圧を含む最大値
④ IRRM: 繰り返しピーク逆電流
⑤ Tj: 接合温度 PN接合の保証温度
⑥ Tstg: 保存温度 デバイスの保存温度
一般に逆電流は温度と共に増加し、逆電圧と共に増加するので、定電圧印加状態での漏れ電流による損失を放熱設計の際に考慮する必要があります。
又は定格電圧の1/2以下の電圧で使用します。

Si製のSBDの逆方向漏れ電流

左図は、シリコンを用いたSBDの漏れ電流の逆電圧依存性を示したものです。温度と共に漏れ電流が増加し、逆電圧と共に漏れ電流の増加する様子が伺えます。
使用する場合は、通電状態のみならず、オフ状態での損失も考慮する必要があります。

 

 

SiCを利用したSBDの逆方向漏れ電流

左図はSiCを用いたSBDの逆方向漏れ電流特性です。
接合温度が低い場合は、漏れ電流も少ないのですが、接合温度が増加すると、急激に増加するようになります。
ただし、PN接合と違い、高速で動作する事ができます。

 

 

一般のショトキーバリアダイオードの一例を下記に示します。

耐圧の高い(SiC)SBDの一例を下記に示します。

 

 

 

2f. (MOS)FET(電界効果型トランジスタ)
電界効果トランジスタ(FET)には、接合型電界効果トランジスタ(ジャンクションFET)とMOS型電界効果トランジスタ(MOSFET)があります。

ジャンクションFETのNチャネルタイプの記号と構造は、左記のように示されます。
ドレイン(D)に正の電圧を印加すると電流が流れます。もちろん負の電圧を印加しても電流が流れます。
ゲートに負の電圧を印加すると、P層とN層の境界にあったはホールは負の電極へ引き寄せられ、電子は正の電極(ソース端子)へ引き寄せられ、空乏層が発生します。
この空乏層が広がって、左右の空乏層がつながってしまうと、ドレインからソースに至る電子の領域が分断され、電流が流れなくなってしまいます。即ち負のゲート信号のオフ・オンによって、電流を通電したり、遮断したり出来ます。

Pチャネルタイプの記号と構造は、左記のように示されます。
ドレイン(D)に負の電圧を印加すると電流が流れます。もちろん正の電圧を印加しても電流が流れます。
ゲートに正の電圧を印加すると、P層とN層の境界にあったはホールは負の電極(ソース端子)へ引き寄せられ、電子はゲートを経由して正の電極へ引き寄せられ、空乏層が発生します。
この空乏層が広がって、左右の空乏層がつながってしまうと、ソースからドレインに至るホールの領域が分断され、電流が流れなくなってしまいます。即ち正のゲート信号のオン・オフによって、電流を通電したり、遮断したり出来ます。

MOSFETのNチャネルタイプの記号と構造は、左記のように示されます。
ドレイン(D)に正の電圧を印加してもPN接合が逆バイアスされているため、電流は通電しません。
P層の上にある酸化膜の更に上にあるゲートに正の電圧を印加すると、ソース電極よりP層を通して電子がこの酸化膜の下に集まってきます。
電子がたくさん集まると、見かけ上N層と同等になるので、ドレインからソースに電流が流れます。
この見かけ上のN層をチャネルといいます。チャネルが出来ている間、電流はドレインからソースへも、ソースからドレインへも流れます。
ドレインに負の電圧を印加すると、PN接合が順バイアスされ、電流が通電します。一般にこのダイオードをボディダイオード(BD)といいます。

MOSFETのPチャネルタイプの記号と構造は、左記のように示されます。
ドレイン(D)に負の電圧を印加してもPN接合が逆バイアスされているため、電流は通電しません。
N層の上にある酸化膜の更に上にあるゲートに負の電圧を印加すると、ソース電極よりN層を通してホールがこの酸化膜の下に集まってきます。
ホールがたくさん集まると、見かけ上P層と同等になるので、ソースからドレインに電流が流れます。
この見かけ上のP層をチャネルといいます。チャネルが出来ている間、電流はドレインからソースへも、ソースからドレインへも流れます。
ドレインに正の電圧を印加すると、PN接合が順バイアスされ、電流が通電します。一般にこのダイオードをボディダイオード(BD)といいます。

このPチャネルMOSFETとNチャネルMOSFETを同じP層の基板の上に作成し、左図のように配線すると、ロジックICのNOTが出来ます。これを二つ接続すると、バッファになります。
このように、MOSFETの配線を工夫する事により、ロジックICが作られます。

 

 

 

NチャネルMOSFETの記号は、左図が一般的なのですが、ボディダイオードの特性を考慮しなければならない場合は、左下図のように、ソースからドレインに向けてダイオードを追記します。

 

 

 

 

また、MOSFETの電圧が高くなると、ドレインとソースの間隔を広く取らなければなりません。そこで高耐圧の製品は、左図のように、ドレインをチップの裏面にもってきます。ゲートとソースが同じ平面上にあるこの製品はプレーナ(構造)とも呼ばれます。

 

チャネルのオン抵抗を低減するために、ゲート用の溝を掘りそこに酸化膜とゲート電極を施したトレンチ(溝)構造の製品も開発されています。
プレーナ構造よりもオン抵抗が低くなります。

 

 

また耐圧を持たせているN層の厚さを薄くする為に、P層とN層を交互に配置したスーパジャンクションという構造の製品もあります。

 

 

 

MOSFETの重要な特性は、次のようになります。
① Vds(ON) 又は Rds(ON) : ドレイン・ソース間電圧又はオン抵抗
指定した電流でのドレイン(D)・ ソース(S)間電圧降下又はオン抵抗
常温(25℃)よりも高温の値が重要
② ID: ドレイン電流:周囲温度(=ケース温度)25℃で通電できる電流
(スイッチング動作をしない事が前提、指定のケース温度での値を表示している場合もあります。)
③ IDP:パルスドレイン電流: チャネル温度が定格を超えないという条件で通電可能な電流
④ VDSS:ドレイン・ソース間電圧:25℃でドレイン・ソース間に印加できる電圧 低温ではVDSSが下がるので、寒冷地で使用する場合は要注意
⑤ アバランシェ電流IAR:DC/DCコンバータ等で、起動時に定格電圧を超える場合は重要です。
⑥ Tch: チャネル温度 チャネル部の保証温度
⑦ Tstg: 保存温度 デバイスの保存温度
⑧ VGSS:ゲート・ソース間に印加出来る電圧の最大値、ゲート回路の駆動電圧は、この値以下に制限する。 (ゲート条件は電気的特性のスイッチング時間の測定条件に合わせるのが好ましい)
⑨ スイッチング時間 tr, ton, tf, toff:メーカで表示しているのは、指定条件での標準値です。実使用の最悪条件での確認が必要です。

参考1)Rds(ON)特性

通常は25℃での値が表示されていますが、パワーデバイスの場合、常温(25℃)で使用する事は少なく、チャネル温度(接合温度)は最大定格近傍となります。
オン抵抗は温度と共に増加する事を考慮する必要があります。

左記はTK100L60Wの例です。
参考2)BD(ボディダイオード)のQrrとtrr
ブリッジ回路で使用する場合、ボディーダイオード(BD)に電流が通電し、MOSFETがターンオンした時に、短絡電流(BDの逆回復電流)が通電します。
BDのVf(=Vsd(OFF))が高くQrrが少なくtrrの短い素子を選択します。

また、ゲート抵抗を大きくして、ターンオン時のdi/dtを低減する方法もあります。
下記はボディ対オードの特性の一例です。

 

          TK100L60Wの例

低耐圧のMOSFETの代表例を下記に示します。

(MOSFETにとって)高耐圧であるMOSFETの一例を下記に示します。

MOSFETに使用される用語、記号はメーカにより若干相違があるようです。
正しく理解して、正しく使用して下さい。
(絶対最大定格)

(絶対最大定格つづき)

 

(電気的特性)

(容量特性)

 

(スイッチング特性)

(ダイオード特性)

(熱的特性、サーミスタ、他)

2g. IGBT (Insulated gate bipolar Transistor)
IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)は本来逆阻止タイプのデバイスです。しかし多くの用途が高速で使用されるため、逆方向の阻止特性を犠牲にして、高速のIGBTが開発されました。現在一般的にIGBTというと逆阻止耐圧の少ない高速用のIGBTを指します。本来のIGBTを示す場合は、逆阻止IGBTと言います。
IGBTの記号の記号は左図のように示されます。高速IGBTも逆阻止IGBTも同じです。

 

 

IGBTの構造は左図のようになっています。
コレクタに正の電圧を印加した状態で、ゲートに正の電圧を印加すると、ゲートの直下に電子が集まり、Nチャネルが発生します。これはMOSFETの動作と同じです。
初めはPNダイオード+MOSFETとして動作します。
このドレイン電流がPNPトランジスタのベース電流として動作するので、PNPトランジスタのコレクタ電流がNPNトランジスタのベース電流となります。これはサイリスタの動作と同じです。
但し、サイリスタとして動作しないように、PNPトランジスタのhFEとNPNトランジスタのhFEの積が1以下となるように制御します。
すると、ベース電流が無くなった時にIGBTはターンオフする事になります。
GTOの場合は、NPNトランジスタのベース電流をゲートから引出してターンオフしたのですが、IGBTではPNPトランジスタのベース電流を減少し、hFE(PNP)*hFE(NPN)が1以下となるようにしてターンオフするようにしています。早くターンオフさせるためには、PNPトランジスタのベース・エミッタ間に抵抗を挿入する事が有効なのですが、P層が抵抗で短絡される構造となるので、逆方向の阻止特性がなくなります。
逆阻止IGBTと(高速)IGBTの等価回路を示すと左図のようになります。
MOSFETの持っていたボディダイオードはPN接合で阻止されるので、逆方向の通電能力はありません。
(高速)IGBTの場合もPNPトランジスタのベース・エミッタ間抵抗の値が大きいので、通電能力はありません。
逆方向に電流を通電する必要がある場合は、IGBTの電流の向きとは逆の方向に電流を通電するように、高速ダイオードを接続します。
IGBTの仲間には逆導通IGBTというものもあります。

その構造は左図のように、IGBTの一部に高速のダイオードを構成します。

 

 

記号及び等価回路は上図のように示されますが、これは上図のようにモノリシック(一個の半導体)として作成した場合に限らずマルチチップ(IGBTとFRDのチップを同一のパッケージ内に組み立てた場合)にも使用されます。

IGBTの重要な特性は、以下のようになります。
① VCE(sat) : コレクタ・エミッタ間飽和電圧
指定した電流でのコレクタ(C)・エミッタ(E)間電圧降下、温度が上昇すると低電流では低下し大電流では増加する。
② IC: コレクタ電流
指定の周囲温度(=ケース温度)で通電できる電流。通常はケース温度として80℃程度が選択される。
③ ICM:パルスコレクタ電流
接合温度が定格を超えないという条件で、通電可能な電流(通常は定格のコレクタ電流の2倍)
④ VCES:コレクタ・エミッタ間電圧
25℃でのコレクタ・エミッタ間に印加できる電圧、低温ではVCESが下がるので、寒冷地で使用する場合は要注意
⑤ Tj: 接合温度 PN接合部の保証温度
⑥ Tstg: 保存温度 デバイスの保存温度
⑦ VGES:ゲート・エミッタ間に印加出来る電圧の最大値、
(ゲート条件は電気的特性のスイッチング時間の測定条件に合わせるのが好ましい、通常はVGE=+15V/-15Vになっているが、低電流の製品ではVGE=+15V/-0Vの場合もある。)
⑧ スイッチング時間 tr, ton, tf, toff
メーカで表示しているのは、指定条件での標準値です。使用条件(電気部品の配置)で変わるので、実使用の最悪条件での確認が必要です。

左記は、CM225DX-24T1(定格電流が225AのIGBT)のVce(sat)の電流依存性(温度がパラメータ)を示したものです。
コレクタ電流が約50Aとなった時点にクロスポイントがあり、この電流では温度によって変化しませんが、これ以下の電流では、温度が上昇するとVce(sat)が低下し、これ以上の電流では、温度が上昇すると増加します。

IGBTの場合は、一緒に利用する、FRDのQrrとtrrの特性も重要です。
ブリッジ回路で使用する場合、IGBTがターンオフすると、その電流は反対アームのFRDを通電します。そしてIGBTに再度ターンオン信号が与えられると、IGBTには短絡電流(FRDにとっては逆回復電流)が通電します。
FRDの内蔵されていないIGBTを使用する時、耐圧が高くQrrが少なくtrrの短いFRDを選択します。
FRD内蔵の場合は、Errの少ないIGBT(モジュール)を選択するか、又はゲート抵抗(Rg)を大きくしてターンオン時のdi/dtを抑制し、ターンオン時のピーク電流を抑制して、ターンオン損失及び逆回復損失を低減します。但しゲート抵抗を大きくし過ぎると、ターンオン時間が伸びて、ターンオン損失が増加するので、適当なゲート抵抗の値で決定する必要があります。
下記に、前述のIGBTモジュール(CM225DX-24T1)に内蔵されている、FRDの特性とスイッチング損失の特性を示します。

下記にFRDを内蔵していないIGBTの一例を示します。

バイポーラトランジスタよりも駆動回路が容易なので、スイッチング用のバイポーラトランジスタの置き換えとして利用されています。

下記にFRDを内蔵しているIGBTの一例を示します。

Vds(ON)が0.7Vを超える大電流領域では、Vce(sat)<Vds(ON)となるので、MOSFETの代替えとして利用されます。

参考)2g-1. IGBTモジュール

IGBTモジュールとは、金属ベース基板に絶縁基板又は絶縁シートを乗せ,それに回路配線を描きパワーデバイスを搭載し、それに必要な配線を接続して,一定の回路機能を持たせ、安全の為に、ケースで覆った回路機能部品です。
IGBT及びFRDの耐圧をキープする為にシリコンゲルを注入したりエポキシ樹脂で固めたりする事もあります。

参考)2g-2. 絶縁基板と絶縁樹脂シート

従来は、DBC(Direct Bond Copper)基板と呼ばれる絶縁基板を利用して、上面には回路パターンを描いて半導体チップを搭載し、この半製品を放熱用の銅ベースに半田付けしていました。
長年の実績のある構造ですが、絶縁基板と銅ベースとは膨張係数が異なるため、寿命に限界がありました。

最近では、DBC基板の代わりに、膨張係数を銅ベースに合わせ、さらに絶縁性を有した絶縁樹脂が、実用の段階に入っています。
膨張係数が銅ベースと類似しているので、厚い銅ベースは不要となります。
また絶縁樹脂と銅とは加圧で接合するので、銅ベースとの半田付けも不要となります。
参考)2g-3. モジュールの回路
回路パターンを引くことにより、いろいろな回路のモジュールが構成されます。
以下に一般的な例を示します。

以下はバッテリー用途のIGBTモジュールの一例です。

以下は一般産業用の一例です。

電鉄・送配電用にも使用されています。

参考)2g-4 IPM(又はIPD)
IGBTモジュールが一般化すると、駆動回路及び保護回路を内蔵した製品の要請がありました。そこでIPM(Intelligent Power Module)が開発されたのです。

左図はIPMの等価回路の一例です。
左図では、P側のIGBTには各1個のIC, N側のIGBTには合計で1個のICを搭載していますが、この内容に限定される事はありません。各メーカ、各IPMによりそれぞれ異なります。また、小電流定格の製品では、複数のチップではなく、一個のチップに全ての機能を搭載した場合に、モジュールと区別して、IPD(Intelligent Power Device)という事もあります。

 

下記は家電用のIPM(IPD)の一例です。

下記は産業用のIPM(IPD)の一例です。

(大電流用のIPMの一例です。)

ところで、IGBTの記号は完全に統一されている訳ではありません。

多くのメーカが左記の記号を使用していますが、

左記の記号を利用しているメーカ(旧IR系のInfineonとST-micro)もあります。

それと同様に、IGBTの開発された時期やメーカ、応用によっても用語や記号に若干の差異があります。
自分の理解と同じではないと思った場合は、そのメーカのその製品のデータシート(或いはアプリケーションノート)を参照して、正しく理解して下さい。

**********  3. パッケージ  **********
3a.ディスクリートタイプ

ディスクリートタイプのIGBTは各社ともに似たような呼称を利用しており、互換性を有しています。サイズ別に列挙しましたので、参照して下さい。

3b. IGBTモジュール

IGBTモジュールの場合は、共通なパッケージもありますが、多くは互換性がありません。ラインアップを見て、特性優先か、互換性優先か、メーカ選択か、まずは方針を決めて取り掛かる必要があります。
なお、三菱の製品にはパッケージ名称がありませんでしたので、シリーズ名称―素子数―サイズ(メーカ名)で表記しています。

中でもセミクロンは、オリジナルのパッケージを有しています。

また、No.64、No.69は標準パッケージになりつつあります。

特殊パッケージとして、ピンフィン付きのモジュール、水冷用のモジュールもあります。

最近では、両面冷却できるパッケージも開発されています。(但し従来のIGBTモジュールとは、異なった構造のIGBTチップが必要となります。)

 

 

 

3c. IPM(又はIPD)のパッケージ

面実装の集積回路と変わらない小型パッケージの製品があります。
集積回路でおなじみのDIPパッケージがあります。

電流が大きくなると、IGBTモジュールのパッケージに近づいてきます。

**********  4.デバイス比較 **********

4a. Si vs SiC
半導体の技術動向を予測すると、次のようになりそうです。

IGBTモジュール vs Si-IGBT+SiC-SBDモジュール vs SiC-(MOSFET+SBD)モジュールの割合は、応用回路のスイッチング周波数とSiCデバイスの価格に左右されると推定。

SiCデバイスの現在(2019.04)のラインアップ

 

SBDは、左記メーカが量産しています。
600V系で50A,
1200V系で40A
1700V系で25A が最大のようです。

 

 

 

MOSFETは、InfineonとRohmとCREE=Wolfspeedが量産販売しています。
他の半導体メーカも生産していると推定されるのですが、外販していません。

 

 

 

SiC-SBDとSi-IGBTを組み合わせたハイブッドタイプのIGBTモジュールは、三菱電機、富士電機、Infineonで販売しています。

 

 

 

SiC-SBDとSiC-MOSFETを利用したいわゆるフルSiCモジュールは、三菱、Infineon, Rohm, CREEで販売しています。
一番電流の大きいのは三菱で、電圧が高いのはRohmとCREEです。

 

 

また、SiCを利用したIPMを、三菱が開発しています。

 

SiCの競合である、GaNは、600Vクラスまで、進んでいます。

 

製品ラインアップの紹介はありませんでしたがサンケンもGaNデバイスを開発しているようです。

4a-(a) Si FRD vs SiC SBD

まずは、同一パッケージの富士電機のシリコン製のFRDと富士電機及びInfineonのSiC SBDを比較してみましょう。
熱伝導率がSiで1.5W/(cmK), SiCで4.9W/(cmK)である事を考慮すると、FRDと同じ有効面積でSBDを作れば、その熱抵抗は、0.237℃/Wとなるはずです。
ところが、富士電機のTO-247パッケージに入ったSiC-SBDの熱抵抗は1.3℃/Wになっています。これから、SiC-SBDの価格を考慮して、有効面積をSi-FRDの約1/5にしているものと推定されます。同様に推定すると、InfineonのSiC-SBDの有効面積は、富士電機のSi-FRDの約2/3と推定されます。価格を無視すれば、まだまだ特性の改善される余地があります。

さて、その素子の高温時のVFの特性カーブをみると、富士電機のSiC-SBDのVFは常にSi-FRDよりも高くなっています。SBDのVFがPNダイオードのVFよりも高いという事は富士電機のSiC-SBDのチップの厚さがSi-FRDに比べて十分薄くなっていない事を示します。

一方、InfineonのSiC-SBDのVFは4Aを超えると富士電機のSi-FRDよりも低くなっていますので、Infineonでは富士電機より薄いSiCウェーハを取り扱っていると考えられます。
通電損失では、富士電機のSiC-SBDが最も大きく、富士電機のSi-FRDとInfineonのSiC-SBDが同等になっています。(ここで示したVFの値はTjmaxでの標準値)理論的には、同じ耐圧の場合、SiC-SBDのVFはSi-FRDの1/10にまで下げられるという事になっていますので、まだまだ製造技術を改善する余地がありそうです。

SBDを採用する時に注意しなければならない事は、逆電圧印加による漏れ電流での損失です。

100V以下のSi-SBDは、定格電圧の1/2以下で使用するよう心掛けていますが、上記の1200V-Si-FRD, 1200V-SiC-SBDを比較すると左図のようになっています。約1000Vで交差しますので、定格電圧の8割程度では使用できそうです。(富士電機のSiC-SBDは漏れ電流が殆どありません。これはSiCウェーハの厚さが厚く、実力が企画よりも遥かに高いという事をしめしているものと思われます。

ケース温度と許容損失の関係は熱抵抗から求められます。
スイッチング損失を無視し、通電損失のみで評価すると、Tc=100℃の時、InfineonのSBDの許容損失は187.5W, 富士電機のFRDは64W 富士電機のSBDは57Wとなっています。

前述のVF,損失の電流依存性特性から読み取ると、InfineonのSBDは70A, 富士電機のFRDは30A, 富士電機のSBDは20Aとなります。
(ここでは、VF特性としてデータシートに記載されている標準値を利用しました。)

4a-(b) Si vs SiC MOSFET (vs IGBT) @650V

600V系のTO-247パッケージにはいったSi-MOSFET, SiC-MOSFET, Si-IGBTを比較してみます。
Si-MOSFETとしてInfineonのIPZ65R019C7, SiC-MOSFETとしてRohmのSCT3017AL, Si-IGBTとしてON-semiのFGY160T65SPDを選びました。

InfineonのSi-MOSFETとRohmのSiC-MOSFETは材料が異なるのにオン抵抗はあまり減少していません。しかしSiC-MOSFETのドレイン電流はSiのMOSFETのドレイン電流の約1.5倍となっています。SiC化により電流能力は増加していますが、それでもIGBTの半分程度です。
熱抵抗は、SiとSiCでほぼ同じになっていました。材料の熱伝導率を考えると、SiC-MOSFETにはまだまだ改善の余地があると思われます。

上記の品種で通電損失を比較すると、40AまではSiC-MOSFETが有利となり、それを超えるとSi-IGBTとなります。
Si-MOSFETにはメリットがありませんでした。

 

ボディダイオード(BD)の特性に注目すると、SiC-MOSFETの特性が最悪となり、Si-MOSFETのBDとIGBTに内蔵されているFRDが略等価になっています。
SiC-MOSFETを使用する場合は、IGBTに内蔵されているFRDと同等なFRDを逆並列に接続するか又はSiC-SBDを逆並列に接続する必要がありそうです。

BDの漏れ電流は、MOSFETの漏れ電流に含まれるので、検討の必要はありません。

IGBTに内蔵されているFRDの漏れ電流と損失を求めると、左図のようになります。
FRDの漏れ電流による損失はIGBTの通電損失と比較し、無視できる程度の値です。

熱抵抗から許容損失を求めると左図のようになります。
一番許容損失が大きいのはSi-IGBTですが、SiC-MOSFETには、まだまだ特性改善の余地がありますので、新製品に対する期待が大です。


SiC MOSFETのスイッチング損失は左記の通りです。(Eonが60Aで600uJ程度)

 

 

 

 

 

一方 IGBTのスイッチング損失は、60Aで25℃の時3mJ, 175℃の時4mJとなります。
20kHzで使用すると、SiC-MOSFETのスイッチング損失は12W, IGBTのスイッチング損失は80Wとなります。

スイッチング損失の観点からすると、SiC MOSFETが有利となります。

但しデータシートに記載されたスイッチング条件と実際に使用する回路及び条件とは、必ずしも一致しませんので、必ず実機にて、スイッチング損失(Eon, Eoff, Err)の確認をして下さい。

4a-(c) SiC MOSFET vs Si IGBT @1200V

600V系と同じように、TO-247パッケージでSiC-MOSFETとIGBTを比較しました。
SiC-MOSFETの代表はRohmのSCT3022KL, IGBTの代表はInfineonのIKY75N120CS6です。
残念ながら、SiC-MOSFETの熱抵抗は、Si-IGBTの熱抵抗よりも高くなっていました。

 

 

 

 

電圧降下(MOSFETのVDS(ON)とIGBTのVce(sat))と損失の電流依存性を左図に示します。
40A以下はSiC-MOSFETが有利、それ以上はSi-IGBTが有利という結果になっています。
SiCのチップサイズをIGBTと同等にすれば、更にSiC-MOSFETの通電能力が向上します。

SiC-MOSFETのボディダイオード(BD)の電圧降下は、Si-FRDの電圧降下よりも常に高くなっています。
MOSFETの損失が大きく、BDの損失が無視できる場合は、このままでも良いが、電力回生が発生し、ダイオードで整流して エネルギーを改正する場合には、電圧降下の低いSi-FRD又はSiC-SBDをMOSFETと逆並列に(BDと並列に)接続する必要があります。

熱抵抗から許容損失を求めると左図のようになり、現時点では、IGBTがMOSFETよりも有利です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上図の左記は、SiC-MOSFET、右記はSi-IGBTのスイッチング損失を示したものです。当然ですが、IGBTのスイッチング損失が(SiC)MOSFETよりも大きくなっています。

オンヂューティを1/2と仮定すると、75A以下では、SiC-MOSFETを使用すると高い周波数までスイッチングが可能であり、75Aを超えると、通電損失の影響が大きいため、IGBTの方が高い周波数まで動作させる事ができる事になります。

SiC-MOSFETの通電損失が低減すれば、熱抵抗が低減すれば、更に許容周波数が増加し、IGBTとの境界となる電流値も増加する事になります。

4a-(d) SiC MOSFET vs Si IGBT @1200Vモジュール

パッケージサイズ(62×122)の似ている製品(左記)

で検討してみます。
スイッチング特性の試験条件から判断すると、CREEは300A, Rohmは600A, 三菱は800Aで、三菱のSi-IGBTも800Aです。
熱抵抗はCREEが0.075℃/W, Rohmが0.061℃/W、
三菱が0.042℃/W で三菱のSi-IGBTに徐々に近づいています。
SiCの熱伝導率はSiの三倍ありますので、まだまだ低く出来るはずです。

左図は、デバイスの電圧降下と通電損失の電流依存性を示したものです。
三菱のSiC-MOSFETの電圧降下が最も低く、損失も少なくなっています。

 

BDとSBD又はFRDを比較すると、左図のように、Si-FRDの電圧降下が最も少なくなっており、SBDの損失を比較すると三菱のSBDが最も少なくなっていました。

許容損失は、三菱のSi-IGBTが最も大きい事になっています。
SiC-MOSFETの中では、Rohmの製品の許容損失が最も大きい事になっています。

SBD, FRDも同様で、三菱のSi-FRDの許容損失が一番大きいく、SiC-SBDの中ではRohmという事になっています。

 

 

上記は、各メーカのスイッチング特性のカーブです。
CREEのスイッチング損失は少なく(400Aで12mJ程度)、Rom、三菱はほぼ同じで400Aで比較するとCREEの約2倍になっています。
また、Rohmと三菱は、SBDのスイッチング損失も記載していますが、ターンオン、ターンオフの損失に比べると非常に小さい値となっています。
これに比べ三菱のSi-IGBTは損失が大きく、Si-FRDのスイッチング損失(Err)も大きくなっています。
許容損失の1/2が通電損失で残りがスイッチング損失により発生すると考えると、許容される周波数は、上図のようになります。
電流が大きくスイッチング周波数の低い(5kHz程度)場合は、三菱のSi-IGBTが有利ですが、電流が800A以下になると、SiC-MOSが有利になります。

(定格電流は800A以下ですが、スイッチングの特性データから判断すると、CREEのSiC-MOSFETは400Aまで、三菱のSiC-MOSFTは800Aまで、RohmのSiC-MOSFETは1200Aまで、三菱のSi-IGBTは1600Aまで、接合温度が定格を越えなければ、スイッチング動作が可能なようです。)

おまけ)三菱電機では、ハイブリッドSiC(パワー)モジュールを下記のように分かりやすく説明しています。(Si-FRDをSiC-SBDに交換するだけでも損失が低減する。)

(フル)SiC(パワー)モジュールの場合は、次のように説明しています。

4b. Si vs GaN

左図は、シリコン(Si)のFETです。ゲート電圧が0Vの時、空乏層は無いか少ないので、ドレイン電流はソースに向かって流れます。
ゲートに負の電圧を印加すると、N層の電子の一部がP層に取り込まれて空乏層が出来ます。この空乏層はドレイン電流が通電できないので、印加電圧が少ないとオン抵抗が増加し、印加電圧(の絶対値)が大きいとオフ状態になります。

 

 


GaNの場合は、材料が高価なので、Si基板の上に形成します。
ゲートに電圧を印加しなければ、電流はドレインからソースへn-AlGaN層を通じて流れます。
電圧を印加すると、空乏層が広がり抵抗が増加します。ところが更に電圧を印加すると、更に空乏層が広がり、空乏層がi-GaN層に達すると、電流はi-GaN層を高速で通電するようになります。
ノーマリーオフ型のGaN-FETは左記のようにゲートの下にP層を作ります。
ゲート電圧が無い場合、NPNバイポーラトランジスタになりますので、通電しません。
正の電圧を印加するとバイポーラトランジスタとしてコレクタからエミッタ(図ではドレインからソース)に電流が通電します。更に電圧を上昇すると、P層の周りに空乏層が発生し、通電していた電流は電子濃度の薄いi-GaN層を通電するようになります。i層は電子濃度が少ないので高速で動作できます。(=オン抵抗が低くなります。)

現在(2019.04) GaN-FETを供給出来る会社は上記の通りです。
Rohmは自社開発をしていましたが、技術提携に変更しました。
代表的な例を以下に示します。

 

 

 

GaN-FETのオン抵抗は、上記右図のSi-(スーパジャンクション) MOSFETのオン抵抗に近づきつつあります。

Si-MOSFET  Rds(ON)=19mΩ(Max) 17mΩ(Typ.)

GaN-FET  Rds(ON)=25mΩ(Typ)

SiC-MOSFET Rds(ON)=17mΩ ID=118A

Si-IGBT        IC=240A @TO-247 package(前頁:SiC-MOSFET650V比較を参照)

それよりも、GaNデバイスは高速動作できる事が魅力です。

下記にデータシートから読み取った主な特性を示します。

********** 5.ドライブ回路 **********

5a IGBT Driver

一般に家電用では、2500V耐圧のドライバを使用します。
出力電流は、駆動電圧(一般に15V)をゲート抵抗(IGBTによって異なる)で除算した値とします。または少し余裕のある値とします。
産業用の場合、スイッチングする直流電圧により絶縁電圧を設定します。ユーザ(又は応用)により指定される場合がありますので、その時はユーザの指示に従います。
例えば、電車の750V架線は2500V, 1500V架線は4000Vと言った具合です。
ゲート電圧は+/-15Vで使用する場合が多いので、ゲート電流はIG=30V/Rgとなります。
産業用のモータには、いろいろな電圧定格があります。(220V, 440V, 570V, 2160V, 3300V等)
使用電圧に合わせて選定します。絶縁耐圧が不足する場合は、
光ファイバー絶縁を使用します。

ULに認定されていない製品も販売されています。
ULに認定されていない部品を使用してはいけないという事ではありませんが、認定の取れている部品を使用すれば、装置としてのUL認定の試験が簡略化される事になります。

絶縁タイプでは、産業用の三相インバータ回路の場合6個の絶縁電源が必要です。
家電用で+15V/-0Vで駆動する場合はハイサイドに3個、ローサイドに1個の絶縁電源が必要です。
Bootstrapタイプを使用すると、1個の絶縁電源で済みます。制御回路の電源をそのままインバータの駆動用電源として使用するのです。
即ちコストダウンできます。但し、インバータ運転を開始する前に、Bootstrap用コンデンサに充電する必要があります。従って起動時の駆動シーケンス設計にこの事を考慮する必要があります。

 

5b MOSFET Driver

MOSFETドライバとIGBTドライバの違いは、出力信号の入力信号に対する応答速度です。
MOSFETの応答速度はIGBTよりも早いので、休止期間を短くすするために、応答速度の速いドライバが必要となるのです。
スイッチング周波数が遅く、休止期間を短くする必要がなければ、IGBT用のドライバをMOSFETに使用できます。
またMOSFETのドライバの休止期間を長く設定して、IGBTに使用する事も可能です。
但し、スイッチング周波数は無制限ではありませんので、各々のデータシートで確認してください。

IGBTは主に、300VDC以上で使用されますが、FETは24VDCで使用されることがあるので、比較的低い電圧の製品も販売されています。

SiC-MOSFET(1200VIGBT代替え)用としては、Bootstrapタイプで600V以上のドライバ、
絶縁タイプ用としては、2500V以上のドライバが利用される事になります。

 

 

5c GaN HEMT (GaN-FET) Driver

左記の表はメーカがGaN用とデータシートに記載しているドライバの例です。GaNFET用とMOSFET用の違いは、駆動周波数と信号の遅れ時間になります。
駆動周波数が高く無い場合は、MOSFET用のドライバが転用できます。

左記は、ULの認定番号が記載されていなかったドライバです。

 

Bootstrapタイプは、低電圧の製品しかありませんでした。
これは、モータ制御のような大電流用ではなく、DC/DC電源のような小型の装置に適用される事を示しています。

LS(ローサイドスイッチ)用とは、制御電源の0VラインとMOSFETのソースが同じ電位となるドライブ回路で、一石のDC/DCコンバータ用という事になります。

********** 6.その他 **********
6a. United SiC

United SiC社は、SiCのMOSFETではなく、SiCのJ-FETとSiの低耐圧MOSFETを直列に接続して、低オン抵抗を目指しています。

 

 

6b. DENSO

DENSOでは、SiCMOSFETの最終構造として、バルクのオン抵抗の低減のみならず、チャネルのオン抵抗の低減を目指して、トレンチ構造のSiC-MOSFETを開発しています。

 

以上
お疲れ様でした。

 

 

 

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