セミナー(7/28)概要(第二部:三相インバータ回路の動作)

QUにオン信号が入る前に、QV, QW, QX, QZがオフ状態であり、

QYにオン信号が入っていたとします。

QUにオン信号が入ると、QXのドレイン・ソース間容量を充電します。(①‘)

それと同時に負荷に電流を供給します。

 

QUにオフ信号が入ると、負荷電流は、QUのドレイン・ソース間容量を充電し(②’)、QXのドレイン・ソース間容量を放電します。(②)

QXのドレイン電圧がCOM=0Vより低くなると、負荷電流はQYのMOSFETとQXのBDを通電するようになります。(②)

しかしながら、電源用コンデンサとインバータ間の配線インダクタンスに蓄積されたエネルギーは行き場が無いので、QUのドレイン・ソース間容量を充電します。(②‘) これが、ターンオフ時のサージ電圧の原因となります。

負荷のインダクタンスに印加される電圧は、ボディダイオード一個分ですので、負荷電流は殆ど変化しません。

再度QUにオン信号が入ると、QUとQXには、VCC1と配線のインダクタンスで決定される電流増加の急峻な電流がながれます。

電流が負荷電流に到達するとQXのボディダイオード(BD)の逆回復が始まります。QUには電圧が印加されたままで電流が通電します。(③‘)

逆回復電流がピーク値に達すると、QXのボディダイオードの容量の充電が始まり、QUのドレイン・ソース間電圧も降下します。負荷のインダクタンスには、電源電圧VCC1が印加されるので、負荷電流は再度増加します。

以上は、QYがオンの状態でQUがスイッチングする場合につて述べたものですが、

インバータには、交流の電流が通電します。

U相(QUとQX)に限定してスイッチング電流を表現すると次のようになります。

出力電圧が正弦波となるように、ゲート信号が制御されており、出力電流は正弦波であるとします。

QUにオン信号が入っている場合、電流が正であれば、MOSFET部、電流が負であれば、BD部を通電します。

QUにオン信号が入っていない場合、QXにオン信号が入っているので、電流が正であればQXのBD部、電流が負であればQXのMOSFET部を通電する事となります。

MOSFETでインバータ回路を構成した場合、オン抵抗重視で開発されている、スイッチングレギュレータ用のMOSFETを使用すると、BDの逆回復電荷が大きく使用できません。(損失大、過電流検出誤動作等の理由による)

trrの短いインバータ用のMOSFETを採用する必要があります。

SiC MOSFETを使用する場合、BDはVfが高すぎてFWDとしての機能が働きません。外部にSBDが必要となります。BDに電流が流れないので、trr、Qrrの心配はありません。

MOSFET, IGBT, SiC MOSFETの通電損失を比較してみましょう。

左図は、同じTO-247(又はTO-3P)パッケージに搭載された、

600V MOSFET(TK62N65W5)と600VIGBT(GT30J121) ,

1200V IGBT(GT15Q101), 1200V SiC MOSFET(SCH2080KE)

の通電電流と電圧降下を示したものです。IGBTは温度が上昇するとVCE(sat)が低下し損失が減少するので、25℃のデータのみを表示しています。MOSFETは温度が上昇するとオン抵抗が増加し、Vds(ON)が増加するので、25℃と125℃の両方を掲載しています。

通電損失の比較は、600VMOSFETの125℃のデータと600VIGBTの25℃のデータで行います。1200V系は、1200VSiC MOSFETの125℃のデータと1200VIGBTの25℃のデータで行います。

通電損失のみで比較する場合、600Vの素子は35AまでMOSFETが有利。

1200Vの素子は18AまでSiC MOSFETが有利と言う事になります。

電流密度が高いと、そしてスイッチング周波数が低いとIGBTが有利になり

電流密度が低いとMOSFET又はSiC MOSFETが有利になります。

スイッチング損失については、データシートで比較できませんが、ボディダイオードの逆回復特性を考えるとBDに通電するMOSFETの損失が一番多く、

次にIGBT+FRD

IGBT+SiC SBD

SiC MOSFET+SiC SBDの順になります。

IGBTとSiC SBDの組み合わせは、従来のIGBT+FRDより損失を低減できるので、ハイブリッドと称す事があります。

省エネ、小型化の観点から推奨できるのは、SiC MOSFET+SiC SBDです。

個人的には、MOSFETは250V系

(INV用)MOSFET+SBDは600V系

SiC MOSFET+SBDは600V系、1200V系、1700V系の高速スイッチング

IGBT+SBDは600V系、1200V系、1700V系の大電流応用

SiC IGBT+SBDは3300Vを超える高耐圧製品に向いているのではと考えます。

インバータで重要な休止期間という概念を説明します。

三相インバータ回路は、6個のMOSFETで構成され、P側に3個、N側に3個配置されています。このP側とN側のペアを一相分と見なします。

同じ相のP側とN側に同時にオン信号を入れれば、電源を短絡する形になりMOSFETは破損してしまいます。

P側とN側にそれぞれ反転した信号を入れても短絡電流が流れます。それはターンオン遅れ時間とターンオフ遅れ時間が異なる事が原因です。

ターンオフ遅れ時間の長い素子とターンオン遅れ時間の短い素子が、P側N側に配置されても、短絡電流が流れないように、オンゲート信号を遅らせます。パルス発生器の端子から見ると、P側にもN側にもオン信号の発生していない期間がありますので、これを休止期間といいます。英語ではDead Timeです。

この時間は、使用する駆動回路の遅れ時間も関係しますので、本来は回路設計毎に設定するものですが、取りあえず暫定的に2usとしては如何でしょう。IGBTで使用していた値なので、スイッチング素子がMOSFETであれば十分です。

SiC MOSFETのゲート駆動条件を他の素子と比較してみましょう。

MOSFET(TK62N60W5)の場合、10Vの電源で駆動しています。この製品に限定されず多くの高耐圧MOSFETが10Vの電源を利用しています。

IGBT(CM35MXA-24S)の場合は+15V/-15Vの電源が使われています。この製品に限定されず、多くの製品が2電源方式です。負の電源を利用するのは、ノイズによる誤動作防止の意味があります。

ところがCREEのSiC MOSFET(C2M0025120D)は、+20Vでターンオンさせ、-5Vでターンオフさせています。

一方ROHMのSiC MOSFET(SCT3022KL)は、+18Vでターンオンさせ、0Vでターンオフさせています。

ROHMのSiC MOSFETは、MOSFETに似ていますが、電源電圧が異なります。

CREEの場合は、二電源方式である事はIGBTと似ていますが、電源電圧が全く異なります。メーカによりSiC MOSFETの設計方法が異なるのでしょう。

一電源方式であれば、ブースト回路が使用できるという特徴があり、

二電源方式であれば、絶縁電源が必要との制約はあるが、誤動作し難いというメリットがあります。上記の表のように、SiC MOSFETの駆動回路は、統一されていませんので、自分で選択したSiC MOSFETに応じで、個別に設計する必要があります。

また、定格電流とスイッチング出来る電流とは必ずしも一致していない事に注意を払って下さい。スイッチング用ですから、定格電流ではなく、スイッチングできる電流に注目します。

ROHMとCREEのみでなく、他のSiC MOSFET製造メーカの製品及びモジュールについて確認すると左図のようになりました。(2017年5月時点)

ROHMは+18Vの一電源が標準ですが、-2Vの負電源を必要とするモジュールもありました。

CREEは+20V/-5Vの二電源が標準ですが、+15V/-4Vのディスクリートデバイスもありました。

STMicroにはCREEと同じ+20V/-5Vが主体ですが、+20V/-2Vの製品もありました。

Microsemiのディスクリートデバイスは、+20Vの一電源でしたが、モジュールはCREEと同じ+20V/-5Vを採用していました。本当にデバイス毎の設計が必要なのです。詳細は、下記のWebページを参照して下さい。

ROHM ディスクリート

http://www.rohm.co.jp/web/japan/search/parametric/-/search/SiC%20MOSFET

ROHM モジュール

http://www.rohm.co.jp/web/japan/search/parametric/-/search/SiC%20Power%20Module

CREE ディスクリート

http://www.wolfspeed.com/power/products/sic-mosfets/table

CREEモジュール

http://www.wolfspeed.com/power/products/sic-power-modules/table

STMicro ディスクリート

http://www.st.com/ja/power-transistors/sic-mosfets.html?querycriteria=productId=SC1704

Microsemi ディスクリート

https://www.microsemi.com/product-directory/mosfet/3539-sic-mosfet#parametric-search

Microsemi モジュール

https://www.microsemi.com/product-directory/sic-modules/1347-sic-mosfet#selection-tables

SiC MOSFET駆動用の電源としては、RECOMがCREEのSiC MOSFETをターゲットに開発しているようです。

容量は2Wです。

 

 

 

MOSFET駆動用のカプラを供給しているのは、東芝とBROADCOMです。

東芝は4AまでBROADCOMは5Aまでラインアップを揃えています。

それ以上の電流が必要な場合は、MOSFETの組み合わせで増幅します。

 

 

カプラの詳細は、下記Webを参照して下さい。

東芝カプラ

https://toshiba.semicon-storage.com/jp/product/opto/photocoupler/ic-igbt.html

BROADCOMカプラ

https://jp.broadcom.com/products/optocouplers/industrial-plastic/isolated-gate-drive-optocouplers/gate-drives/

SiC MOSFETの代表例に戻って、MOSFETのゲート容量から100kHzで動作させた時の。損失を計算すると、この表のようになります。

単純計算ですが、CREEのモジュール以外は、2Wで大丈夫なようです。

ドライブ回路におけるP-ch MOSFETとN-ch MOSFETの損失は含まれていませんので、必ず余裕を持ち、実機評価を行って温度異常を発生しない事を確認して下さい。

 

(第二部は以上で終了です。Word版の必要な方はcontact@nsolution.co.jpまでメールで要求して下さい。)

 

 

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